米で仮想通貨取引所・BitMEXが告発される

著者鳥羽賢

2020年10月3日

仮想通貨の高レバレッジ取引を提供して成長してきた海外の仮想通貨取引所・BitMEXが、今週になってアメリカで当局に告発された。この告発が伝わるとビットコイン価格が押し下げられた。

100倍レバレッジが可能

　BitMEXという海外の仮想通貨取引所が、今週になってアメリカで経営者とともに当局によって告発され、一部の関係者が拘束される事態になった。

　まずBitMEXについて簡単に述べておくと、BitMEXは2014年に設立された仮想通貨取引所。会社として登録されているのはインド洋の島国・セーシェルだが、世界各国にオフィスを構えているという。また親会社となっているのは、HDR Global Trading Limitedという企業。

　BitMEXの売りは、仮想通貨のレバレッジ取引にある。つまり株の信用取引、FX、それに先物取引のように、自己資金以上の金額を取引できる。もともと値動きが激しい仮想通貨をレバレッジをかけて取引するのは非常にハイリスクであるが、そのような取引を好む層も一定数いる。

　BitMEXは最大で100倍レバレッジをかけて取引できるサービスを提供している。日本はこれまで仮想通貨の業界団体の自主規制で、仮想通貨取引のレバレッジ上限を「4倍」と定めてきた。また政府が現在仮想通貨レバレッジ上限を「2倍」に定める方向で動いている。それらと比べると100倍が以下にハイリスクな取引かわかる。

　そのBitMEXだが、日本時間の1日夜から2日未明頃に、アメリカの司法省と商品先物取引委員会（CFTC）によって、経営陣数名とともに告発された。告発の罪状はいくつかあるが、まずマネーロンダリング防止に十分な措置を取っていないこと。マネーロンダリング防止は仮想通貨取引に常について回る問題で、各国政府はこの問題に目を光らせている。

　さらに本人確認においてアメリカのルールを守っていなかったことや、アメリカで未登録のプラットフォームを使っていたことも告発の対象になった。

　この告発の情報が公開されると、ビットコインが数万円下落した。1日夜には114～115万円で推移していたビットコインは、2日になった頃に流れたこのニュースによって3万円ほど下げた。

　そしてBitMEXには顧客からの出金依頼が殺到。告発の情報が流れて以降の約24時間で、ビットコイン4万枚以上、日本円にして400億円以上が出金されたという。

　BitMEXは世界に無数にある取引所の1つなので、ここが告発されても仮想通貨業界全体にはそこまで影響があるとは思われない。しかし仮想通貨取引所が常にハッカーの侵入や当局の捜査のリスクに晒される厳しいビジネスであることがわかった。

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