日本の経常・貿易収支が共に過去最大の赤字

財務省が8日に日本の1月国際収支を発表。経常収支は1兆9766億円の赤字、貿易収支は3兆1818億円の赤字で、どちらも比較可能な統計がある1985年以降で最大の赤字額となった。

貿易収支は赤字が続く

　財務省が8日に1月の国際収支を発表した。その中で金融資産以外のモノやサービスの収支を表わす経常収支が1兆9766億円の赤字、経常収支の中で特に貿易の収支額を表わす貿易収支が3兆1818億円の赤字で、どちらも比較可能な統計がある1985年以降で最大の赤字額となった。

　日本の経常・貿易収支は1980年頃～2010年までの約30年間はほとんどの月で黒字の「万年黒字」の状況だった。それが2010年代以降になって変化し、とうとう過去38年で最大の赤字額になってしまった。

　大きな転機となったのが2011年の東日本大震災だった。それまで日本の各地で原発が稼働していたのだが、福島第一原発で事故が起こったために原発を一旦全て停止。火力発電への依存度が高まり、燃料としてのLNG（液化天然ガス）の輸入量が激増した。

　そのため2011年以降の日本の貿易収支は赤字の月がかなり増えてきた。2016・17年の2年間はそれでも赤字の月がほとんどないところまで減ったが、2020年代に入るとまた赤字の月が増加。

特に2022年春以降の円安の進行によって輸入コストが増大して赤字額が膨らみ、貿易赤字も膨らんだ。日本の貿易収支は2021年11月から今年1月まで15ヶ月連続赤字が続いているが、特に2022年5月以降は9ヶ月連続で1兆円以上の赤字が続いている。

　では経常収支の方はどうか？経常収支も2010年以前は数十年の間、ほぼ全ての月で黒字だった。それが2011年の東日本大震災後の燃料輸入増などで変わり、その後は赤字の月も出てくるようになったが貿易収支に比べると赤字の月はまだ少ない。

　経常収支も昨年春以降の円安に影響を受けていることは確かだ。昨年春以降は黒字額が1兆円未満の月が増え、10月は641億円の赤字。そして今年1月は1兆9766億円と過去最大の赤字となった。

　年間（1～12月）の数字を見ても、2011年の東日本大震災後と昨年以降の2回に経常・貿易収支は悪化している。2010年以前の年間貿易収支はずっと黒字だったのだが、震災の影響で2011～15年まで5年連続赤字に転落。特に2014年は10兆円以上の赤字だった。

　2016年以降は黒字に転じたものの、昨年の速報値は15兆7808億円の赤字と過去最大の貿易赤字となった。

　一方年間経常収支の方は2010年まで10兆円以上の黒字の年が多かったものの、2012～14年の3年間は10兆円を割った。2015年以降はまた増え、2022年の速報値は11兆4432億円と2014年以来の低水準となった。

　貿易収支の赤字が多いのに年間経常収支が赤字になっていないのは、海外から得られる利子・配当を表わす第一次所得収支で巨額の黒字が続いているためだ。2022年春以降の円安で貿易収支は赤字が膨らんだが、第一次所得収支は逆に黒字が膨らみ年間で35兆3087億円と過去最高額になった。

　円安が進行しているので、結局は海外から外貨建てで得られる所得があると強いということを示している。