後退に入りそうで入らない国内外の景気

20日朝に日本の第1四半期（1～3月期）GDP速報値が発表され、予想の前期比年率－0.2％に対し、発表は＋2.1％となかなか好調な数字が出た。昨年末から「景気の減速・後退」がよく報じられるようになったものの、日本国内外の景気は明確な後退のサインを見せてはいない。

米も失業率が歴史的な低さ

昨年末には世界的に株安になったこともあり、今年の1～3月期の日本の成長率は前期比年率－0.2％とマイナス成長に陥ったのではないかと予想されていた。しかし20日になって発表された成長率は、予想に反して＋2.1％となかなか好調な数字だった。また前期の成長率も、前期比年率で＋1.9％から＋2.1％に上方修正された。

昨年末か今年初め頃から、「景気が減速している」とよく報道されるようになった。確かに2017年や18年前半ほどの好景気はすでに見られない。5月13日に内閣府が発表された景気動向指数では、3月までのCIを基にした景気の基調判断が2013年1月以来初めて「下方への局面変化」から「悪化」になった。

しかしその一方、20日に発表されたGDPがプラスだったことから、それほど急激に後退していないこともわかる。日本国内の景気は減速から後退に向かっているのかもしれないが、それほど急激ではなくゆっくりと向かっているように見える。

では海外を見るとどうか？アメリカの4月雇用統計が5月頭の連休中に発表されたが、前月比で26万3000人増と堅調な数字だった。また4月失業率の方は、約50年ぶりの3.6％という低さだった。

この数字だけ見ると、アメリカの景気は絶好調のように見える。しかし決算が悪化している企業も少なからずあるので、その点では手放しで好景気ということはできない。またトランプ大統領は今後の景気の悪化を避けるために、FRBに対し利下げをするよう圧力をかけ続けている。またFRBも利上げは当面しないと述べており、利上げができるほどの好景気にはないことを示している。

今後も今のような緩やかな景気減速・後退が続くのだろうか？そうだといいのかもしれないが、現在の世界にはいくつかのリスク要因がある。その1つは米中貿易戦争。米中貿易戦争は去年の夏～秋頃にお互いが関税を発動し、激化懸念がかなり高まった。だがその後は新たな関税は発動させず、ひとまず小康状態になった。

しかし今月になって、トランプ大統領が突然これまで10％だった一部中国製品への関税を、25％に引き上げると発表。そして引き上げ後に中国は報復措置を打ち出し、それに対してアメリカはさらなる追加関税をかけることを示唆するなどまた貿易戦争が激化している。

イギリスのEU離脱リスクも消えていない。離脱日を10月末まで長期延期してもらったはいいが、今のところ離脱案を議会で承認させる見通しは全くない。メイ首相は6月前半頃に採決をする予定でいるが、野党・労働党の協力も得られず承認される見通しはない。そしてメイ首相自身が、6月に退陣を余儀なくされる状況になっている。このままいくと10月末にはまた「合意なき離脱」の可能性が高まるだろう。

米中貿易戦争や英のEU離脱が悪い方向に行けば、景気は緩やかな後退から急激な後退になる可能性がある。しかしそうでなければ、現在のような後退しているようでそれほどしていない状態がまだ続くかもしれない。