各国の中銀はリーマン前の状態には戻れない

FRBによって今週公表された議事要旨では「今年中にバランスシートの縮小を停止する」と述べていた。金利だけではなくバランスシート面でも、もはやリーマンショック前に戻ることは無理な状態になった。そしてそれはアメリカだけの話ではない。

FRBのBSはまだ大きい

去年まで利上げを続けてきた米FRBが、去年末の株価下落を見て今年になってから「利上げは当面見送る」と述べ始めた。そしてそれだけではなく、今週公表されたFOMCの議事要旨では、「参加者のほぼ全員が、年内にバランスシート縮小を停止する計画を発表することが望ましいと考えている」と述べられていた。

つまり政策金利も2008年のリーマンショック前のピークより遥かに低い現行水準に留めるだけではなく、バランスシートもリーマン前の水準に戻す前に縮小を止めるというのだ。

バランスシートとは企業が保有する資産や負債の金額を示す表のこと。そしてFRBのバランスシートは、リーマンショック以降急激に拡大してきた。リーマン前は1兆ドル程度だったFRBのバランスシートは、リーマン後に拡大を続け2015～17年には4兆5000億ドルにまでなった。

バランスシートが拡大してきたのは、2008～14年には量的緩和によって国債等の資産を大量に購入してきたからだ。資産を購入するとそれがバランスシートに記録され、金額が膨らんでいく。その結果が4兆5000億ドルという数字になった。そして日銀も2013年以降大規模量的緩和を続けているので、バランスシートの金額は増え続けている。

FRBは2014年秋で量的緩和を終了し、その後景気が安定してきたために2018年初頭頃からバランスシートの縮小を始めた。ところがそれを、2019年中に停止すると議事要旨で述べていたのだ。2019年2月現在、FRBのバランスシートはまだ4兆ドルほどあり、リーマン前の水準にはほど遠い。今年中に停止をしたら、せいぜい3兆5000億ドル程度にまで減るだけだろう。

つまりFRBはバランスシートをリーマン前まで戻すことは諦めることになる。そして金利についても、これまで利上げを続けてきたがリーマン前のピークである5.25％より遥かに低い水準にある。FRBの金融政策はもはやリーマン前には戻らない。

そしてそれはアメリカだけではない。日銀の金融政策も、もはやリーマン前まで戻すことが困難になってしまった。1990年以前の昔は、日本でも3～5％の高い金利になっていた。ところが1990年にバブル崩壊して以来、日銀は金利を低く抑える。そして2000年以降はほぼゼロにしたまま、すでに20年近くが過ぎた。当初は「一時的」と言っていたゼロ金利が、もはや恒常的になったのだ。

リーマン以降の超金融緩和も同じで、最初は「2年間」と言っていた国債購入やETF購入だが、すでに止められなくなっている。日銀にはもう止める術はないので、当面は続くだろう。各国中銀の政策はリーマン前のような状態には戻れなくなってしまったのだ。