原油価格はまだしばらく上がるか

原油価格の上昇が続いており、今週になって昨年10月以来となる66ドルをつけた。この上昇の背景にはイラン、ベネズエラ、リビアなどの産油国でそれぞれの事情により原油の生産・輸出が難しくなっていることがある。

産油国で制裁や内戦など

今年になってから原油高が続いている。NY原油は昨年12月末に43ドルまで下がり、そこで一旦は底をつけた。しかし年が明けてからはほぼ一貫して上昇が続き、今週には昨年10月以来約6ヶ月ぶりとなる66ドルをつけた。

最近になって上げ足を速めているのには、産油国のそれぞれの事情がある。ベネズエラでは数年前から経済危機が続き、原油の生産力が低下している。特に今年になって国会議長が「2人目の大統領」として名乗りをあげたため、国内の混乱が一層深まっている。

リビアは数年前から国内に2つの政府がある分裂状態が続いており、今月になって東部の勢力が西部の勢力に対して軍事侵攻を開始。この内戦の激化によって同国の原油生産への影響が懸念されている。

そしてイランは昨年11月からアメリカが原油の禁輸制裁を課していたが、日本などの8ヶ国・地域は除外されていた。しかしアメリカは今週になって、5月2日以降は除外措置を撤廃すると発表した。これでイランの原油輸出に対する締め付けがさらに厳しくなる。このように産油国それぞれの事情があり、これらの問題はすぐに解決できるものではない。これらを材料とする原油高はまだ続くだろう。

過去1年ほどの原油価格の動きを見ると、昨年9月までは上昇が続き9月には75ドルに到達。しかし10月になって突然下落に転じ、12月下旬までには43ドルとピークから40％以上安くなった。だがすでに述べたように、年明けからは上昇し今週には66ドルまで上がってきている。

原油のこのような動きは株式市場に連動している。昨年10月と12月には世界同時株安になり、12月はダウ工業平均が約2,500ドル安と史上最大の下げとなった。原油が75ドルから43ドルまで急落したのも、10～12月だった。

一方年明けからは株式市場の回復が続いているが、同時に原油価格も回復している。このように株式市場が暴落して金融市場全体にリスク回避ムードが広がると、原油価格も下がることが多い。今後も株式市場の上昇が続くなら、原油高も続いていくだろう。

そして原油高は国内のガソリン価格も押し上げている。24日には資源エネルギー庁が今週の全国平均ガソリン価格を発表し、リッターあたり148.4円で10週連続上昇だった。しかし国内のガソリン価格は、海外の原油価格より1～2ヶ月遅れて動く傾向がある。現在のガソリン価格は1～2ヶ月前の海外原油価格を反映しており、現在の原油価格ではない。したがってこれから1～2ヶ月原油価格が同じ水準に留まったとしても、ガソリン価格は上がる可能性が高い。

石油を輸入する日本にとっては原油価格は安い方がいいのだが、現在のいろいろな材料を見る限りまだしばらく原油高は続きそうだ。