原油価格「マイナス40ドル」の珍現象

日本時間の21日未明になって、NY先物市場で取引されている原油先物5月限の価格が急落。0ドルすら越えてマイナス圏でさらに下がり、一時－40ドルという通常時ではありえない価格をつけた。これもCOVID-19がもたらした混乱によって起こった珍現象と言える。

取引最終日前の異常現象

COVID-19（新型コロナウイルス）によって世界中が混乱しており、その混乱は原油相場に極めて珍しい現象を起こした。

NY先物市場で取引されている原油先物5月限は、20日朝方は16ドル付近からスタート。だが世界的な原油需要減退の見通しは根強く、この日は日中から夜にかけてさらに下落が続き日付が21日になった頃には10ドルになった。

そして午前1時を過ぎた頃から、異常な現象が起こった。10ドルを割って1桁になった原油価格はさらに急激に下がり続け、0ドルに接近。そして0ドルで止まるどころか0を越えてマイナスになってもまだ下がり、午前3～4時頃には－40ドルというありえない価格をつけた。

このような価格をつけたのは、当然ながらNY市場で原油先物の取引が始まってから初のことと思われる。だがこの値動きを見るにあたって、何点か留意しておきたい点がある。

1つは全ての金融商品がマイナスの価格をつけるわけではない点。今回のNY原油先物5月限は0ドルを越えてさらに下がりマイナスになったが、例えば日本の株式などは1円が最安値で、0円やマイナスにはならない。

もう1つは21日未明に暴落した原油先物はあくまで5月限で、原油先物には6月限、7月限と毎月新しい限月の銘柄が出てくる点。そして5月限は4月21日が取引最終日となっており、21日未明のマイナス価格は最終日直前という特殊な状況下で起こった現象だった。

COVID-19によって世界的に経済活動が止まり、原油の需要も極端に低下している。そのため先週にすでに原油価格は大きく下落していたのだが、ここ数日になるとアメリカの原油貯蔵場所がすでになくなりつつあるという予想が高まってきた。

消費量が極端に落ちているのに生産だけ行われれば、無駄な在庫が膨らみ貯蔵量は増え続け、貯蔵容量の限界に近づいてきている。

先物は取引が終了し清算日になると、現物の受け渡しが発生する。原油先物の場合買い手は原油を受け取ることになるのだが、現在は受け取っても貯蔵場所に困る買い手で溢れるようになった。

その結果取引最終日が迫っている原油先物5月限は、「うちは受け取れないから誰か引き取ってくれ」「うちは無理、買えない」という参加者ばかりで買い手がほぼ不在になり、結果として－40ドルというありえない価格がついた。

しかしすでに述べたように、これは取引終了が迫っている5月限だけで起こった特殊な現象だ。6月限はまだ20～22ドル付近で取引されており、先週時点からそれほど大きく動いていない。ただし現在のような経済活動停止状態が続けば、6月限の取引終了日が近付くと同じことが起こる可能性がある。