世界の不況はまだ始まったばかり

COVID-19によって経済が大きく落ち込んでいるが、5月になってから日本やアメリカなど先進各国も経済活動再開に向けて動いている。しかし世界的に今後不況期が続くことは避けられず、現時点ではまだ不況期の入口に立っているに過ぎない。

以前のモデルに戻れない業界が多い

2020年になってから世界中に拡がったCOVID-19（新型コロナウイルス）のために世界各国は人と人との接触を避けるよう国民に要請し、結果としてあらゆる経済活動が止まってしまった。

2月まではまだ武漢を中心とした中国と一部の周辺国の問題と見られていた。しかし3月になってアメリカや欧州全域に拡大。4～5月になるとブラジル、ロシア、インドなどの国でも急激に感染が拡大している。

とはいえ3～4月から経済自粛が行われていた日本や欧州各国は感染者がかなり減ったので、5月から経済活動再開に動いている。またアメリカは感染者はあまり減っていないものの、同様に5月から経済を少しずつ動かしている。

これで3～4月に世界に拡がった最初の「コロナショック」は過ぎ、やや情勢は落ち着いてきた。そして株価も5月後半になってかなり上昇している。

ただしこれで世界経済がまた上向くと考えるのは楽観的過ぎる。日米欧が経済活動を再開しているとはいえ、COVID-19はまだ世界に存在しており、毎日約10万人の新規感染者が出ている。

この状況では2019年以前のように自由な経済活動はとてもできない。まず海外旅行はほぼ絶望的で、世界各国が入出国を厳しく制限しており国際航空便もほとんどが欠航となっている。これでは旅行業界は数年は回復できないし、今後も倒産が相次ぐ。

また多くの業界で、客をこれまでのように入れられなくなる。例えば飲食店は、これまでのように密集して着席せずに席と席の距離を離して座ってもらうことが求められる。だがそれでは以前の半分程度の客数しか入れられない。

他の着席する業界でも同様で、例えば映画館、劇場、コンサートホールも再開しても感染を防止するために1席おきにしか客を入れられない。鉄道、バス、飛行機などの交通機関ですら同じだ。基本満席にして利益を得るビジネスモデルのこういった業界は、客数が半分になれば利益にならず廃業を考える企業が続出するだろう。

さらにCOVID-19の影響によるリストラも始まっている。29日にはフランスの自動車メーカー・ルノーが、今後3年間で全世界の従業員の約8.5％にあたる1万5000人を削減する計画を発表した。ルノーと提携関係にある日産自動車は、28日にすでに世界的な合理化計画を発表。閉鎖されると発表されたスペインの工場では反対する労働者がデモを起こした。

ボーナスカットなども今後増えるのは必至だ。日本の旅行大手・H.I.S.は、今夏のボーナスは見送りとなると発表。労働者のリストラやボーナスカットが相次げば、それは消費に影響し景気全体をさらに押し下げていく。この負のスパイラルは、まだ始まったばかりで当分終わらない。

世界にとっての希望はワクチン開発だが、開発されるワクチンがどの程度の防止力を持ち、どのくらいの期間有効なものになるか全く見えない。強力なワクチンが開発されればよいが、そうでないなら世界経済の萎縮は相当長い期間続くことも考えられる。