ラッキンコーヒーの不正を受けNASDAQが上場基準を厳格化

19日になって、米NASDAQ市場が一部の外国企業が上場する際の基準をこれまでより厳格化するという情報が流れた。これは昨年上場した中国のコーヒーチェーンが、売り上げを粉飾する不正を行っていたことを受けての措置と見られている。

わずか2年足らずで上場

アメリカの2大証券取引所の1つ・NASDAQだが、そのNASDAQが今後上場基準を厳格化するという情報が19日になって一部のメディアで報道された。

その情報によると、対象は米国企業ではなく一部の外国企業で上場を申請したもの。そして上場認可の条件として、上場時に企業が2,500万ドル（約27億円）の資金を調達するか、それができないなら上場時の時価総額の25％に相当する株式を売却することを義務づける。

市場ではこの措置は中国企業をターゲットにしたものと見られている。というのも、NASDAQでは昨年上場した中国のコーヒーチェーン「ラッキンコーヒー（Luckin Coffee）」が、粉飾決算の末にわずか1年で上場廃止になるという大問題が発生したためだ。

ラッキンコーヒーは中国で2017年10月に創業されたので、2020年5月時点でも創業から3年も経っていない。しかし創業直後から急激に出店を拡大し、2018年末までにはすでに1,000店舗以上を展開。

コーヒーチェーンとして世界的な知名度を持つスターバックスに追いつき追い越せを目標としており、「中国のスタバ」とも言われた。そしてラッキンコーヒーは創業から2年も経っていない2019年5月に、米NASDAQ市場に上場した。

しばらくは何も問題なかったのだが、2020年1月31日になって、「マディー・ウォーターズ・リサーチ（Muddy Waters Research）」という金融関連会社が、ラッキンコーヒーが粉飾決算を行っている可能性を指摘した。なおこの日の同社の株価は、終値で32.49ドルだった。

当初ラッキンコーヒーは否定していたのだが、内部では秘密裏に調査を開始。その結果2020年4月2日に同社が2019年第2四半期から第4四半期にかけ、22億元（約333億円）の売上を粉飾していた事実を発表した。

粉飾決算の疑惑が出てきてもなんとか持ちこたえていた同社の株は、4月1日の終値で26.2ドルだった。しかし自ら粉飾を発表したことにより、2日には75％も暴落（NASDAQには値幅制限がない）し6.4ドルで終了。その後4.39ドルまで下がったところで、4月7日にNASDAQは同社の株を取引停止とした。

それから1ヶ月以上経った5月19日になって、NASDAQはついにラッキンコーヒー株の上場廃止を発表。20日には取引が再開されたが、すでに3ドルを割る安値で取引されている。

そしてすでに述べたような上場基準の厳格化も、ラッキンコーヒーのようなケースの再発を防ぐためと見られている。日本は2005年頃に新興株ブームとなり、IPOを公募で購入すれば非常に多くの利益が得られる時期があった。

しかし2006年1月にライブドアショックが起こり、IPOブームが終わるとともに上場基準も厳しくされた。今回のラッキンコーヒーの不正から上場基準厳格化の流れは、ライブドアショックを彷彿とさせるものがある。