ユーロ/米ドルはパリティ割れへ

米FRBが今後利下げを休止するとの見通しが高まり、今後も利下げを続けるECBとの政策の違いが明確になってきた。そのためユーロ/米ドルはユーロ安・米ドル高が進み約2年ぶりのパリティ割れが見えてきた。

2022年にも一度パリティ割れ

　先週10日に発表された米12月雇用統計は、予想を大きく上回る前月比25万6000人増だった。この統計によって1月末のFOMCにおける利下げ予想はほぼなくなり、それだけではなく今後6ヵ月ほど利下げを休止するとの見方も高まった。

　アメリカには今回の統計の他にも利下げを続けにくい事情がある。来週20日にトランプ大統領が正式に就任してトランプ政権が始まる。トランプ氏の掲げる政策は減税、他国からの輸入品に対する大規模追加関税、そして国内の不法移民の強制退去など、インフレ再燃につながる恐れのあるものが多い。

　トランプ政権でどの程度インフレが再燃するか、あるいは抑えられるかを見極めないとFRBは利下げを続けることは難しいと考えている。

　それに対してユーロ圏のECBは利下げを休止する予定はなく、今年も利下げを続けると見られている。そのため1月14日時点で1ユーロ＝1.03ドル付近で取引されているユーロ/米ドルは、今後パリティ（1ユーロ＝1米ドル）を超えてさらにユーロ安・米ドル高に進むことも予想できる。

　ここ数年のユーロ/米ドルの動きは両国・地域の金融政策が反映されてきた。2015～20年の6年間は1ユーロ＝1.05～1.25ドルのレンジで推移していたレートだが、2021年になりアメリカでユーロ圏より早くインフレが進行。インフレの進行とともに緩和政策の終了と利上げ以降見通しも米FRBの方が早かったことで、2021年以降はユーロ安・米ドル高に動いた。

　そして2022年7月には、ユーロ正式発足直後の2002年以来20年ぶりとなるパリティ割れ、1ユーロ＝1ドル未満となった。だがこの頃にはユーロ圏のインフレ高も鮮明となっておりECBも同年7月から利上げを開始したことで、9月に0.953ドルをつけた後はトレンドが転換。11月にはパリティを超えてユーロが上昇した。

　その後2023～24年の2年間は主に1ユーロ＝1.05～1.1ドルで推移していたものの、ここ2～3ヶ月はユーロ安・米ドル高が進行して1月14日現在で1.03ドル付近で推移している。

　今後FRBはしばらく利下げを休止する可能性が高まっているので、2022年に続く再度のパリティ割れの可能性が高まっている。