パウエル議長が利下げを示唆でNY株上昇、米ドル下落

22日の午後11時からFRBのパウエル議長がジャクソンホール会議で講演を行った。その中で次回・9月のFOMCで利下げを行うと示唆する発言があり、発言後からNY株は暴騰して米ドルは急落している。

S&P500は100ポイント上昇

　年に1度、アメリカのワイオミング州ジャクソンホールに世界各国の金融・財政政策担当者やエコノミスト達が集まり、ジャクソンホール会議が開催される。この会議は1978年から毎年開催されてきて、2020・21年のみパンデミックでオンラインだったが2022年から対面に戻った。

　そして今年も行われ、最も注目されているのは日本時間の22日午後11時からのFRBパウエルの講演だった。次回のFOMC政策金利発表は9月17日水曜（日本時間18日木曜未明）に行われる予定。アメリカではインフレ率が下がってきており、かつトランプ政権の政策の不透明さも晴れつつあるため次回は6会合ぶりに利下げをする可能性が高いと見られていた。

　しかしその一方で先週14日木曜に発表された米7月卸売物価指数は予想をかなり上回る数字だったため、市場はもう少し次回利下げに関するパウエル議長の姿勢の情報を求めていた。

　そして行われた午後11時からの講演では、議長は「リスクバランスは政策修正を正当化する可能性がある」との発言を行った。ここで言う「リスクバランス」とは、雇用リスクとインフレリスクのバランスのことを指すと見られる。

　つい今週発表された前回FOMCの議事要旨では「大半のメンバーはリスクにおいて雇用よりインフレが大きいと見ている」との文言があった。これは利下げをしないことによる雇用のリスクよりも、利下げをすることによるインフレリスクが大きいためまだ利下げには慎重になるべきと示唆している。

　だが22日夜のパウエル議長の講演では、「政策修正を正当化する可能性がある」との言い方となっていた。これによって次回・9月のFOMCにおいて利下げが発表されるとの見通しが大きく高まった。

　市場が次回のFOMCで利下げが発表されるとの確信を深めたことで、22日夜の金融市場は大きく変動。NY株式市場ではダウ工業平均が、講演後の約2時間で1,000ドル近く上昇して45,700ドルを超え、史上最高値を大きく更新した。またS&P500指数も100ポイント以上上昇している。

　一方為替市場では利下げ観測のため米ドルが急落した。講演前は1ドル＝148円50銭付近にあった米ドル/円は、講演によって米ドルが2円ほど急落して1時間後には146円50銭に接近した。

　今回のパウエル議長の発言から判断すると、9月のFOMCで利下げが発表される可能性はかなり高いであろう。FRBの金融政策は新たな局面を迎える。