ソフトバンクGは2年連続巨額赤字

著者鳥羽賢

2023年5月11日

11日にソフトバンクグループが2023年3月期決算を発表。純損益は9,700億円の赤字で、前年の1兆7000億円に続き2年連続の巨額赤字となった。

4年間で3回目の赤字

　11日にソフトバンクグループ（銘柄コード：9984）が2023年3月期の通期決算を発表。その内容によると、売上高は前年の6兆2200億円から5.6％増の6兆5700億円だった。

　純損益は9,700億円の赤字だった。前年・2022年3月期が1兆7000億円と同社史上最大の赤字だったが、それに続いて2年連続の巨額赤字となった。

　また同社は2020年3月期も9,600億円の巨額赤字で終えており、ここ4年で3回目の巨額赤字決算となった。ただし最近4年で唯一黒字だった2021年3月期は5兆円の巨額利益を出しており、これは2020年、22年、そして23年の3年間の赤字額を合わせたより大きい。

　ソフトバンクGがまたも巨額赤字に陥ってしまった理由は、基幹事業の投資事業の不振が続いているためだ。ソフトバンクGは投資ファンドとして、ソフトバンク・ビジョン・ファンド（以下、「SVF」）とその第2弾（以下、「SVF2」）を運営している。

　しかしSVF・SVF2の今期の業績は極めて悪く、5兆3220億円もの赤字だった。その一方で保有していた中国のIT大手・アリババ株の大量の売買契約を締結したことで、その利益が約4兆5000億円も計上できた。その結果投資事業全体では8,350億円の赤字だった。

　赤字額は前年より小さかったものの、今期の決算を見る限りソフトバンクGの見通しはあまり良くない。基幹事業のSVFで5兆円以上という巨額赤字を出し、それをアリババ株を放出したことで埋め合わせた形になっている。

　だがこれまでの大量放出で、ソフトバンクGがまだ保有するアリババ株の割合は全体の3.8％しかなくなった。今後は同様にアリババ株の放出で赤字を埋め合わせる手段は使えなくなる。

　代わりに2016年に買収した英半導体大手のアームが今年中に上場できる見通しになり、アーム株が新たな財務的基盤になるという見通しはある。ただしアリババほど強固な基盤になるかは不透明だ。

　世界的な金融引き締めを受け2022年以降は株式市場の上昇が止まっているため、それがソフトバンクGの投資事業の業績に悪影響を及ぼしている。しかし上昇は止まっているが暴落もない。今後株式市場が暴落したら、ソフトバンクGはさらに厳しい状況に追い込まれることもありえる。

　日本円で約2兆円を投資してきてようやく2021年10月に上場したが、その後株価が低迷するWeWork（ウィ・ワーク）など最近のSVFは失敗例が多い。今回の決算発表でもSVFとSVF2は投資規模の縮小を進めていると述べているように、SVF事業の失敗がかなり明確になってきた。

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