セブン＆アイの買収が撤回され株価大幅安

昨年夏からセブン＆アイホールディングスの買収を提案してきたカナダの企業が、1年近くを経てついに買収を撤回した模様だ。この発表を受けて17日の東証ではセブン＆アイ株が9％下落した。

経営陣はMBOの試みも

　コンビニのセブンイレブンやスーパーのイトーヨーカドーなど日本の代表的な小売チェーンを統括するセブン＆アイHD（銘柄コード：3382）だが、昨年7月にはカナダの流通大手企業から買収を持ち掛けられた。

　買収を持ち掛けたのは、カナダでコンビニなどを経営する「アリモンタシォン・クシュタール（以下、「クシュタール」）」という企業。この社名はフランス語なので日本人にはあまりなじみがないが、直訳すると「夜遅くまで食料品」という意味になる。

　8月19日にセブン＆アイが公表した当初の買収提案は1株あたり14.86米ドル（カナダ企業であるが米ドル）で、当時のレートだと約2,300円、総額にして6兆円弱だった。

　同年9月6日にはセブン＆アイが買収提案に対し、同社の価値を「著しく過小評価している」との理由から拒否する姿勢を回答。それから何度か当初の買収提案に対するやり取りを行った後、10月9日には価格を20％程度引き上げた1株あたり18.19ドルで再度の買収提案があった。

この提案に対抗するために、10月13日にはセブン＆アイの経営陣がMBOを提案した。MBOとは「Manegement buyout（マネジメント・バイアウト）」の略で、簡単に言うと経営陣による買収を意味する。クシュタールがセブン＆アイに対してTOB（株式公開買い付け）などをかけて買収しようとする前に、防衛策として経営陣が先に株を全て買い占めようという策になる。

　この買収には9兆円程度の資金が必要だったが、4ヶ月あまり動いた挙句、資金が集まらなかったという理由で今年2月末に断念を発表した。

　その後は4月に両社が敵対的買収をしないという契約を締結したが、買収そのものは大きな動きがないまま数ヶ月が経った。そしてカナダ時間の今週16日（日本時間17日早朝）に、クシュタールが買収を撤回したと通知してきた。

　東証はこの報道を重く見て、事実関係が確認できるまでの間セブン＆アイ株の取引を停止。撤回の事実が確認できたことから午前10時15分に取引が再開されたが、投資家はこの結果に失望して株価は一時10％近く暴落。終値は9.2％安の2,007.5円だった。

　成立すれば日本の流通業界で過去最大級の買収となるはずだったこの提案は、結局1年を経て成立しないまま撤回終了となった。投資家にとっては株価が下がって嬉しくないだろうが、セブン＆アイの経営陣は買収をよく思っていなかったので安堵したことだろう。