アプリ課金巡る訴訟でAppleに厳しい判決

昨年ゲーム開発企業がApp Storeを通さない課金を認めないAppleのやり方は違法だとしてAppleを訴えた裁判で、10日にそのような課金を認めるよう命じた判決が出た。この判決によってAppleのビジネスモデルは大きな打撃を受けることになる。

課金は認められたが満足せず

　昨年アメリカのゲーム開発企業がAppleを訴えた裁判で、10日に判決が出た。提訴したのはエピック・ゲームズ（Epic Games）という企業で、「フォートナイト（Fortnite）」という人気ゲームを開発・運営していた。

　今回問題になったのはフォートナイトのスマホ版だが、それ以外にもWindows版もあるし、主要ゲーム機で動くものもある。また日本語版も出ている。

　訴訟の原因となったのはいわゆる「ゲーム内課金」で、ゲームを始めた後に随時課金するシステム。背景としてAppleはiOSの全てのアプリに関し、同社が運営するApp Storeを通して発売することを要求。そして売上に対して30％の手数料を徴収していた。

　しかし30％の手数料はアプリの売上高に留まらず、ゲーム内課金のように販売済のアプリに関連して発生する売上にも適用されていた。エピック・ゲームズはそれを不満として、昨年8月にApp Storeを通さないゲーム内課金システムを発表。

　Appleはこれを規約違反として、App Storeからフォートナイトのアプリを削除。だがそれを予想していたエピック・ゲームズは、削除は反トラスト法（独占禁止法）違反に該当するとして米連邦地裁でAppleを提訴した。

　その判決が今週10日に出た。判決ではエピック・ゲームズの主張を認め、AppleはApp Storeを通さない課金を認めるよう命じられた。

　ただしこれがエピック・ゲームズの全面勝訴ではない。というのもエピック・ゲームズはApp Storeの課金システム自体を反トラスト法に違反するものと主張しており、単に同社のゲーム内課金を認めるだけではなくもっと幅広くApp Storeの手数料徴収をやめさせるよう主張していた。しかしその主張は認められなかった。

　これは連邦地裁の判決であり今後どちらかが控訴する可能性が残っているため、控訴されると判決確定はまだ先となる。エピック・ゲームズのスウィーニーCEOは今回の判決について「勝訴ではない」と不満を表明しており、控訴する可能性は高い。

　株式市場はこの判決に対して予想通り売りで反応した。9日のNY株式市場では154.07ドルで終了したApple株は、10日になると前日終値より高い155ドルで寄り付いてスタート。しかしその後判決の報道が流れると売上への影響を懸念して下落し、終値は3.3％安の148.97ドルだった。

　同様の訴訟はエピック・ゲームズだけではなく他のアプリ開発業者からも起こされている。そのためAppleは今年8月末に、年間収益100万ドル以下のアプリ開発業者は今後3年間手数料を15％に引き下げるなどの譲歩案を発表した。

　またフォートナイトはAndroid版を提供するGoogle運営のGoogle Playからも削除されたため、そちらも訴えている。この裁判の判決はまだ先だが、Appleのものと同様に注目されている。アプリ手数料のビジネスモデルはAppleにとって重要であり、それが崩れると同社の今後の業績に大きな影響が出る。