もはや大幅円高は経済ショックしかない!?

7月31日に日銀が0.25％の利上げを行ったが、その直後に株式市場が大暴落したことで追加利上げがやりにくくなった。一方米FRBは0.5％の利下げをして今後もゆっくりと利下げを続ける予定ではあるが、為替レートは1ドル＝150円近くに留まっている。もはや今後は経済ショックでもない限り、1ドル＝100～110円のようなかつての水準に戻ることは難しいのではないか。

今後の米利下げ幅は限定的

　7月31日に日銀が0.25％の利上げを発表したが、その直後8月1～5日の3営業日で株式市場が歴史的な大暴落を見せた。この暴落によって政府日銀幹部は萎縮してしまい、「追加利上げをする」という言葉すら簡単に言えなくなってしまった。

　日銀がこのタイミングで利上げを決定したのは円安とインフレを抑制するためだった。今年に入って円安が止まらなくなり1ドル＝160円を超えて約30年ぶりの円安水準をつけ、今年だけで4回も介入をしたが円安基調は変えられなかった。

　そこで利上げをしてようやく1ドル＝140円台まで戻すことができたが、その代償として株価の大暴落が発生した。

　為替レートは両国の金利差が大きな決定要因となる。ここ最近の円安・米ドル高は日米の金利差が開いたことが大きな要因となって起こったため、金利差を縮小するために日銀は金利を上げた。しかし今後の追加利上げが難しくなってしまい、日銀の利上げでこれ以上為替を円高に誘導することが難しくなった。

　一方米FRBは9月に0.5％の利下げを発表し、今後もスローペースながら追加利下げをしていくと見られている。日米の金利差が今年前半時点よりすでに0.6％程度縮小したにも関わらず、為替レートは150円付近のかなりの円安水準にある。

　米ドル/円レートは2010～12年の民主党政権時代に1ドル＝80～100円の超円高水準に留まった後、2013年のアベノミクス開始を経て2014～21年の8年間は100～120円で安定していた。

　2014～21年の8年間はアメリカが金利を大きく引き上げなかった。2015～18年にかけて緩やかに利上げを続け最終的には2.25～2.5％にしたが、2019年には景気減速が見えてきたためすぐに利下げを開始した。

　日本がこれ以上金利を上げずに1ドル＝110～120円付近まで円高に戻すためには、アメリカが金利を2014～21年と同様の1～2％水準まで引き下げなければならない。

　だが現在は2010年代とは状況が全く違う。2008年にリーマン・ショックがあり株や不動産といった資産価値が激減したことで、その後2010年代は世界的なデフレと低成長が続いた。

　そのような背景があったからアメリカも超低金利を続けてきたが、現在はデフレよりもインフレを警戒しなくてはいけない状況にある。この状態では金利を大きく引き下げることは難しい。

　9月の米政策金利と同時に発表されたFOMC参加者による将来の金利予想では、2026年末時点の予想の中央値が3％、長期予想は2.875％だった。現在のところ、今後利下げを続けてもせいぜい3％にするとしか予想されていない。

　日米の金利差が将来も残るのなら、1ドル＝110円程度まで円高になることを期待しても難しいかもしれない。もはや急激な円高があるとしたら、リーマン・ショックのような経済ショックが起こった場合だけなのではないか。