まだ上がり続けるアメリカの不動産

米は昨年からハイペースで金利を引き上げすでに5％を超えた。それに伴って住宅ローン金利も上がっているのだが、昨年後半に下落した不動産価格は驚くことに今年になって上昇に転じている。米の不動産高騰は一種のバブルとも言えるもので、将来的に弾けることもありえる。

今年になり上昇

　2010年代は2013年頃から日本やアメリカなど多くの国で不動産価格が上昇を続けた。上昇の原動力となったのは超低金利。2010年代は世界的なデフレの時代で、多くの国が金利を非常に低い水準に維持し量的緩和も行ってきた。そのため住宅ローン金利も下がり、不動産を買いやすい環境があった。

　2020年になるとパンデミックが始まったが、パンデミックの影響による景気後退を避けるために各国はそれまで以上に膨大な緩和を開始。低金利と緩和が重なり不動産価格の上昇は2020年以降加速した。

　ところが極端な緩和とパンデミックによるサプライチェーンの混乱などから、アメリカを初め世界各国はここ40年で最大とも言えるインフレになった。インフレが急激に悪化しているのを見たFRBは、2022年春から慌てて金融引き締めを開始。わずか1年で政策金利を5％も引き上げるハイペースで引き締めた。

　政策金利が上がれば住宅ローン金利は上がるので、利上げ開始後アメリカの住宅ローン金利は上昇。指標となる30年固定金利ローンのレートは最近では7％付近になっている。

　セオリー通りだと、住宅ローン金利が上がれば住宅を買いにくくなり不動産価格は下げに転じる。ところが現在のアメリカでは、必ずしもそのセオリー通りに動いていないようだ。

　アメリカの住宅価格の指標にケース・シラー住宅価格指数（以下、「ケース・シラー」）がある。これは全米の主要20都市の住宅価格から計算される指数。発表はかなり遅く、最新の数字は8月末に発表された6月分になる。

　ところで日本のウェブサイトに載っているケース・シラーは、前年同月比の数字が多い。しかし実際には前年同月比だけではなく、2000年1月を100として現在の月がいくつかを表わす数字も発表されている。2000年以降の節目の数字は以下のようになる。

2005年1月：160

2010年1月：145

2015年1月：166

2020年1月：212

2021年1月：236

2022年1月：282

2023年1月：292

2023年6月：308

　これまでの動きをまとめると、2005～10年はリーマン・ショックの影響で下落。しかし2010年代は上昇に転じて2015年を過ぎると加速。さらにパンデミックで膨大な緩和を行った2021年には1年間でかなり上昇した。

　しかし金利を5％にまで引き上げたにも関わらず、今年に入って住宅価格は上昇している。2022年は6月の308をピークに年後半は下げたが、今年1月に292をつけてからは5ヶ月連続上昇した。

　日本のサイトによく載っている前年同月比の数字だと、2022年の前半6ヶ月間は毎回20％前後の大幅高だった。しかしFRBが利上げを始めてから上げ幅が縮小し、今年3～6月は4ヶ月連続で1％程度のマイナスだった。

　ただしこのマイナスは去年の同時期上がり過ぎていたためであり、去年7月以降は下げていたために今年の7月以降は前年同月比でプラスに転じることが予想される。

　つまり金利をこれだけ上げてもまだアメリカの不動産は上昇が続いている。一体いつまで上がるのか見当がつかないが、いつかは中国のように膨らみすぎたバブルが弾けることになるかもしれない。