WeWorkの創業者がまたも事業にとん挫

かつて日本のソフトバンクグループが約2兆円も投資をしながら、大成功することはできず最終的に破綻したWeWorkという企業があった。その元創業者が仮想通貨事業をスタートしていたが、今週になってその事業もとん挫してしまったとの情報が流れた。

カーボンクレジットのトークン化

　かつてアメリカにWeWork（ウィ・ワーク）という企業があったが、この企業は孫正義氏のソフトバンクグループにとって最大級の投資失敗となったケースとして悪い意味で有名になった。

　WeWorkはオフィススペースを間貸しするコワーキングスペース事業として2010年に創業。創業者にしてCEOはアダム・ニューマン氏という男性だった。

　ソフトバンクグループの孫正義氏がこの事業にほれ込み、運営するファンドを通して日本円で約1兆円もの巨額を投資。そして2019年春には上場を申請した。ところが上場申請後に、ずさんな会計処理やニューマン氏が会社のお金を使って個人的な旅行をしているなど不祥事がいくつも発覚した。

　やむを得ず上場申請は取り下げ、ソフトバンクグループはニューマン氏に巨額の退職金を支払って退いてもらい、1兆円の追加投資をして経営立て直しを図った。

　WeWorkはその後経営を建て直し、2021年10月にはSPAC制度を利用して上場に成功した。だが上場をしたとはいえ業績は振るわず、株価は下落が続きソフトバンクグループは投資額の回収ができない状態が続いた。そして2023年11月にはついに、連邦破産法第11条の適用を申請して倒産してしまった。

　一方ニューマン氏の方は、WeWorkを退社後別のFlowcarbon（フローカーボン）というブロックチェーン事業の会社を立ち上げた。

　カーボンとは炭素の意味なので、この企業は温暖化や炭素排出関連事業を行う。環境関連でカーボンクレジットという概念がある。これは炭素ガスを排出する権利をクレジットという形で証券化して、それを売買するというもの。

　つまり環境基準を達成できない企業はカーボンクレジットを買うことで、追加で炭素ガスを排出することを許される。逆に基準を達成して余裕のある企業は、カーボンクレジットを売ることでお金になる。

　Flowcarbonが行っていたのは、このカーボンクレジットをトークン化する事業であり、すでに7,000万ドル（約100億円）の資金調達にも成功。そして独自トークン「GNT」の発行も計画していた。

　しかし今週になって、この事業にとん挫したとの情報が流れた。理由の1つとして、この事業に対する業界や市場からの反対が強かったことがあるようだ。アダム・ニューマン氏はWeWorkで失敗したが、今度はFlowcarbonで失敗となかなか事業に成功しない。ただしソフトバンクグループを含む投資家から資金を得る能力は秀でていると思われる。