TPPに「死」が宣告された日

TPPに「死」が宣告された日

著者 鳥羽賢
2016年11月23日

何年も前から日米を初め太平洋周辺諸国が合意のために頑張ってきたはずのTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)だが、アメリカのトランプ新大統領が21日になって「自分が大統領に就任したら即日撤退する」と発言した。参加国の中で最大の経済規模を持つアメリカがいなくなったら、TPPは事実上「死」を宣告されたも同然だ。

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アメリカ抜きでは無価値

TPPはアメリカなど太平洋周辺地域諸国が中心となって、巨大な経済ブロックを作ろうという試みとして2009年頃から交渉が始められた。日本は当初参加していなかったが、民主党時代の2011年に交渉参加を表明。TPPが発効したら圏内でアメリカに次ぐ第2位の経済規模を持つ国となるはずだった。

そして日本では2012年に自民党に政権が交代後も、TPP交渉参加は自民党が引き継いだ。その後数年間の交渉の末に、ついに2015年10月には12ヶ国で基本合意。次の段階として、各国が国内で承認を目指すはずだった。

現在のところ議会で正式に承認が終わっている国はニュージーランドのみ。日本は国会で審議中で、一方ベトナムは最近になって議会での審議が中止となった。

ベトナムで審議が中止されたのは、アメリカの新大統領となるトランプが「自分が大統領となったらTPPを脱退する」と選挙期間中から述べていたためだった。そして21日になって、トランプ新大統領がビデオ演説で、就任直後にTPPを脱退すると改めて明言した。

参加国で最大の経済規模を持つアメリカが参加しなかったら、TPPの存在意義は大半が失われてしまう。だからアメリカが完全撤退するということは、TPPはすでに「死」を宣告されたも同然なのだ。

こうなると、難しい立場に追い込まれるのは日本だ。日本政府はこれまで、TPP参加には積極的な姿勢を通してきた。アメリカが消極的でベトナムが審議中止をする中、安倍総理が主導して国会で承認にこぎつけようと動いていた。

ただ日本政府もアメリカ抜きのTPPは存在意義がないことはわかっており、安倍総理も今週に「アメリカ抜きでは意味がない」と発言していた。

そしてここにきてトランプ新大統領による撤退宣言である。これから日本政府はどうするのか?1つの選択肢として、ベトナムのように審議を中止してしまう方法がある。ただこれまで積極的にTPPに参加しようとしてきた安倍政権なので、それをやったらかなりみっともない姿を見せることになる。

実際石原TPP担当相は、TPPについて「立ち止まることはできない」と発言。今後も日本としては前向きな行動を続けていく姿勢を見せた。政財界の中には今後アメリカに働きかけてトランプ新大統領の撤退政策を変えさせればいいと考える者がいるが、それはほぼ不可能だろう。

となると現実的には、ともかく国会での承認は終わらせて、その後はアメリカの動向を注視し続けるという道しかないと思われる。日本が主導してアメリカ抜きで発効させることも不可能ではないが、アメリカなしではそこまでする意味がない。

そしてアメリカがトランプ政権でいる限り、参加してくることはほぼ考えられない。これまで努力を続けてきた関係国や関係者にとっては残念な結果だが、TPPが発効される可能性は極めて低くなった。

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