SMBC日興証券の社員が相場操縦の容疑

日本の3大証券会社の1つ・SMBC日興証券の社員が相場操縦を行っていた容疑があるとの理由で、6月に同社の本社が強制調査を受けていたことがわかった。大手証券会社の新たな不祥事に業界が揺れている。

背景にブロックオファーか

　日本の3大証券会社の1つ・SMBC日興証券の社員が株式市場の相場操縦を行っていたとの理由で、6月に証券取引等監視委員会が同社の本社を強制調査していたことがわかった。強制調査は6月とのことなので11月になってやっと情報が公開されたのはやや遅い気がするが、ともかく強制調査の情報は11月2日に流れた。

　今回SMBC日興証券が行っていた相場操縦疑い行為の顛末は以下のようになる。同社は大口の株主から株式を市場外で買い取って別の投資家に販売する「ブロックオファー」という取引を行っていた。

　「ブロックオファー」による販売は滅多なことでは話はこないが、営業マンとかなり親しい優良顧客には稀に話がくることもあるらしい。「ブロックオファー」を行う理由は、大量の株式を市場で売ると大きく価格が下落するリスクがあり、それを避けるためだ。

　SMBC日興証券が行っていた「ブロックオファー」では、大口株主からの買い取り額は特定の日の市場における終値を基準に決めていた。そのため基準となる日の終値が低すぎると大口株主は安く売らないといけないことになり、場合によっては取引が成立しなくなる。

　そこで「ブロックオファー」の基準日となる終値を下げないようにするために、SMBC日興証券の社員が相場操縦に該当する不正な取引を行っていたというのだ。6月の強制調査はその取引について詳しく調べるためのものであった。

　今のところ取引の詳細は明らかにされていない。しかし問題となった取引を行っていた社員は、その違法性を否定して「取引は合法だった」と主張しているという。

　具体的に「相場操縦」に該当する行為には以下のようなものがある。市場に実際に売買を成立させる気のない偽装目的の注文を多く出し、他の投資家に対してその株を買いたい投資家が多くいると見せかける行為を「見せ玉」という。

　また自分自身の買い注文と売り注文を約定させる取引を「仮装売買」と言い、これも相場操縦行為に該当する。

　株式市場で実際にどのような売買が行われているか、個人投資家の目には見えないことがほとんどだ。不正行為は証券取引等監視委員会などが取り締まってくれないと、個人では排除することができない。今回の件も証券取引等監視委員会による厳正な調査と処分が望まれる。