OKEx事件が示す仮想通貨の問題点

今月16日に海外の仮想通貨取引所であるOKExに対し、中国当局が捜査への協力との名目で社員を1人連れ去った。その社員が仮想通貨口座にアクセスするための秘密鍵を保有しているため、それ以来口座にアクセスができず全通貨の出金を停止させる事態に発展した。

秘密鍵ごと当局に拘束か

　海外仮想通貨取引所のOKEx（オーケーイーエックス）で大きな問題が発生している。しかし問題について語る前に、OKExはどういう取引所なのか確認してみよう。

　OKExは中国で2017年に設立された仮想通貨取引所。だが中国は仮想通貨に対する規制がかなり厳しくなっていたので、翌2018年にはヨーロッパのマルタに本拠を移した。マルタは仮想通貨に対する規制が緩いことで知られ、同じ中国発の取引所・Binance（バイナンス）もマルタに本拠を移していたという話で出回ったことが一時あったが、その後Binanceはその話を否定している。

　OKExに話を戻すと、今月16日に中国の公安当局がOKExに対して捜査への協力を求めてきた。この捜査の詳細は明らかになっておらず、OKExに何らかの違法行為の疑いがかかっているためなのか、あるいは全く別件なのかは公開されていない。

　OKExは本拠をマルタに移したとは言えまだ香港など中国にもオフィスを残している。そして中国のオフィスから社員の1人が捜査への協力を理由に公安当局に連れ去られたのだが、その人物がOKExの仮想通貨口座にアクセスするための秘密鍵（パスワードの一種）を持っていた。

　ないと口座にアクセスができない秘密鍵は1つとは限らない。マルチシグと言って秘密鍵を複数設定した口座もあり、今回公安に連れ去られた社員が持っていたのはマルチシグの秘密鍵の1つだったと言われる。

　そして連れ去られた状態では社員が口座にアクセスするための秘密鍵を会社に提供できないため、口座にアクセス不能の状態となってしまった。そのためOKExは16日から全仮想通貨の出金を停止しなくてはいけなくなった。さらに同じ16日に、OKExの創業者である徐明星氏も中国当局に拘束されたと報じられた。

　この事件は秘密鍵が使えなくなると口座にアクセスできなくなるという、仮想通貨の問題点を改めて示した。このような事件はOKExが初めてではなく、2019年初頭にはカナダの取引所QuadrigaCXで同様の事件があった。

　QuadrigaCXの事件は、秘密鍵を持っていたCEOのジェラルド・コットン氏がインドを旅行中に急死したため、秘密鍵が失われたという経緯だった。この事件ではコットン氏の急死前にすでに仮想通貨が大量に引き出されていた事実も見つかっており、今でも謎が多く残っている。

　口座にアクセスするための秘密鍵は特定の人間によって管理され、その人間が会社に来られなくなると口座にアクセスできなくなる。これは仮想通貨業界が抱える大きな問題点であることは確かだ。