IMFが新興国ショックの可能性に言及

IMFが10日に、米が利上げをすることによって新興国から資金が流出する新興国ショックの可能性について言及した。これは市場で「テーパータントラム」と言われる現象に近く、今年は米の利上げが確実なだけに現実に起こることも考えられる。

今年は米利上げの年

　IMF（国際通貨基金）が10日に公表した文書の中で、アメリカが利上げをすることで新興国から資金が流出し新興国通貨が下落する可能性について警告した。

　アメリカではインフレが進行しているため、今年は確実に利上げが行われると見られている。すでにハイペースで量的緩和縮小が進められており、3月に終了予定になっている。その後は利上げが行われるが、昨年末時点で今年は3回（0.75％）の利上げが主に予想されていた。しかし年明けになり、4回（1.0％）の利上げ予想も出てきている。

　そしてアメリカで金利が引き上げられると、それまで新興国に投資されていた資金が引き上げられてアメリカに戻ってくる動きが加速する可能性がある。そうなると新興国の通貨も大きく下落し、「新興国ショック」となる。IMFが10日に述べていたのはそういうことだ。

　これは市場で「テーパータントラム」と言われてきた現象に近い。テーパータントラムとは、緩和縮小を表わす「テーパリング（tapering）」と、かんしゃくを意味する「タントラム（tantrum）」という2つを合成した言葉。テーパリング実施時に、金融市場がかんしゃくを起こしたような極端な動きを見せることを意味している。この極端な動きの中には、新興国から資金逃避や長期金利の上昇が含まれる。

　IMFが言っているのは利上げ時の動きなのでテーパリング時とは多少違うが、金融引き締めの過程で起こるという意味では近い。

　新興国の中でもトルコは、昨年末にすでに大きなショックが起こった。エルドアン大統領の利下げ賞賛発言を受け、11月後半以降にリラが暴落。11月半ばから12月20日夜までに80％もリラが暴落したものの、21日未明に発表した奇策によってようやくリラ暴落が止まった。

　トルコの場合は利下げをしたためにすでにリラの暴落が起こったが、IMFは米が利上げをすると同様のことが他の新興国でも起こるのではないかという懸念を示した。

　例えばブラジルを見ると、2018年頃から通貨レアルが米ドルに対して下がり、2020年5月には1ドル＝5.9ドルをつけた。しかし2021年にはほぼ毎月利上げを行い、年初に2％だった政策金利は年末には9.25％にまでされた。利上げの効果もあって、レアルは2020年5月の安値をその後更新していない。

　だが今後アメリカが利上げをすれば、またレアルが安値を更新する恐れがある。さらに同様のことがロシアやアルゼンチンなどの新興国でも起こりうる。IMFが懸念する新興国ショックは、おとぎ話と言い切ることはできない。