ICOはハイリスクなので投資は慎重に

企業が独自の仮想通貨を発行して資金を調達するICO（Initial Coin Offering）が、日本の国内外で増えつつある。しかしICOに関して投資家を保護するための法整備がまだないので、投資をするのはハイリスクになると認識しておいた方がいい。

独自の仮想通貨発行

2016～17年になって、ビットコインを初めとする仮想通貨の売買が非常に活発になってきている。特にビットコインは2017年に高騰し、11月17日にはついに1BTC＝90万円を超えた。そして他の仮想通貨もたくさん生まれつつある。

仮想通貨ブームを背景として、企業が資金調達のために仮想通貨を発行するケースが増えてきた。これはICO（Initial Coin Offering）と呼ばれる。ICOと似た言葉にIPO（Initial Public Offering）というものがあるが、これは多くの人がご存じのように「新規公開株」を意味する。ICOを日本語で表わすなら、「新規発行コイン」のようになる。

ICOの仕組みは単純で、企業が独自の仮想通貨を発行し、それを不特定多数の人々に売却することで、資金を調達するというものだ。ICOは企業の資金調達法として株式の発行に似ているが、ICOだけのメリットがいくつかある。

メリットの1つは、まだICOの関連法が未整備なので、企業は規制に縛られずに発行できるという点。ただしICOが広まってくると、政府の規制がだんだん入ってくるものと思われる。

また株式と違って、投資家に買ってもらっても議決権は渡らない。そのために経営者が経営権を手放すことなく資金調達が行なえる。

ではICOで発行された仮想通貨を買う投資家にとってのメリットは何か？それは発行した企業が将来大きくなれば、その仮想通貨も値上がりして売却益を得られる可能性がある。またそうならなくても、発行企業の製品を仮想通貨で買えたりするので、その企業の製品を買うつもりなら値上がりしなくてもいい。

このようなメリットがあるが、当然ながらリスクはかなり高いと認識しておいた方がいい。まず将来の成長を期待して仮想通貨を買うにしても、株式を公開している企業でなければ、経営状態を公開する義務はない。したがって投資をした後にどのような経営状態にあるのか把握することもできない。

また資金だけ調達して、その後会社や経営者が逃げてしまう、つまりICOの詐欺事件も起こっている。このような事件があっても、投資家に対する救済措置はほとんどないと言ってもいい。

結局のところICOで仮想通貨に投資をするとしたら、すでに名のある企業でないとリスクが高すぎる。もう少し投資家保護のための法律が整備されない限り、ICOはかなりハイリスクな投資と言える。