HISの赤字決算に見える旅行業界の苦悩

旅行大手のHISが24日に2020年10月期中間決算を発表。純損益が34億6000万円の赤字となり、同時に2002年の上場以来初の赤字決算となった。COVID-19のために旅行需要が激減しているのは周知の事実だが、HISの決算で改めて旅行業界の苦悩が明らかになった。

特に海外旅行の減収が痛手

旅行大手のHIS（銘柄コード：9603）が、24日の東京株式市場終了後に2020年10月期の中間決算を発表。HISは日本企業としては珍しい10月決算なので、今回発表された数字は2019年11月～2020年4月のものとなる。

その内容によると、売上高は前年同期比8.9％減の3440億円。営業利益は前年同期が89億8000万円の黒字だったものが今期は14億7000万円の赤字に転落。経常利益は前年同期が88億7000万円の黒字だったものが今期は7億6000万円の赤字に転落。純利益は前年同期が49億6000万円の黒字だったものが、今期は34億6000万円の赤字に転落となった。

HISの売上は大半が旅行事業となっており、今期も旅行事業の売上が2995億円で全体の87％を占める。しかしこの旅行事業が、前年同期の3368億円から11％減と大きく減少した。

旅行事業をさらに部門別に分けると、主力商品の海外旅行が前年同期の1986億円から34％減の1301億円と大きく減り、この部門の売上減が痛手となった。そして国内旅行は前年同期の295億円から33％減少して198億円。訪日旅行は前年同期の151億円から56％減の66億円。

海外法人の旅行部門は前年同期の936億円から53％増加して1430億円だったが、これは昨年1月に買収したカナダの旅行会社「Red Label Vacation」が新規で連結対象になったための増収であり、真の意味で売上が増えたわけではなかった。

旅行以外の部門では例えばエネルギー部門が前年同期比50％増の140億円と売上をのばしていたものの、旅行部門の減収をカバーできるほどではなかった。

今年になってからCOVID-19（新型コロナウイルス）が世界的に大流行し、世界中で旅行、特に海外旅行が制限されて旅行業界は大打撃となっている。日本の緊急事態宣言はすでに解除されたが、海外旅行需要が回復する見通しは全くない。

この状況ではHISも今後の業務を縮小せざるを得ず、国内にある260店舗のうち80～90店を閉鎖し、さらに宣伝費も削減して年間約200億円の経費を削減する経営建て直し計画を24日の決算と同時に発表した。

それに加えてホテル開発計画の一部を延期や中止したり、銀行から新しい資金調達を実施、2021年卒の新卒学生採用も中止するなど今後1年間の事業計画を大幅に修正した。

HISの株価も赤字決算に鋭く反応した。決算発表前の24日は1,843円で終了した同社の株は、25日には前場から下落し終値は8％安の1,694円だった。旅行業界は見通しが悪いだけに、4月以降のリバウンド相場でもHIS株の戻り幅は他の銘柄に比べると小さい。

COVID-19のパンデミックが今年後半から来年前半頃に終息すればまだ良いのだが、それ以上長続きするならHISのような旅行代理店は大胆なビジネスモデルの転換を行わないとこの先厳しくなるだろう。