ETF等信用取引の委託保証金利率が変更

信用取引をする際に委託保証金率というものがあるが、今週10日から「レバレッジ型」ETF・ETNについての委託保証金率が引き上げられた。レバレッジ型ETF・ETNはハイリスクなため、投資家保護を目的とした変更とのことだ。

レバレッジの分だけ要保証金

　ETF（上場投資信託）やETN（指標連動証券）（以下、「ETF等」）はすでに多くの銘柄が出回っているが、その中でも「レバレッジ型」というものがある。通常のETF等は株価指数や先物など特定の原資産に連動するように動く。しかしレバレッジ型のETF等は、原資産の動きに対し2倍や3倍といった倍率をかけた大きな幅で動くように設計されている。

　当然ながらそういったETF等はハイリスク・ハイリターンな取引になり、失敗すると大きな損失が出ることになる。そして日本には信用取引があり、ETF等も信用取引を使って手持ち資金以上の取引ができる。

　株式・ETF等の信用取引には委託保証金率が決められていて、日本では30％とされる。これは言い替えると手持ち資金を保証金として使えば、最大3.3倍の取引ができるということだ。FXは最大25倍、先物も20～30倍のレバレッジ取引ができるのでそれらに比べると小さいが、現物に比べるとハイリスクになる。

　ETF等の取引にあたり、信用のレバレッジと商品そのもののレバレッジを組み合わせるとかなりのハイレバになる。例えば3倍レバレッジのETFで信用枠を最大使うと、実質9.9倍になる。

　このような取引はリスクが高すぎるので、今週10日からETF等の信用取引における委託保証金率が変更された。通常の株式・ETF等は30％の委託保証金率だが、レバレッジ型ETF等については「30％×商品のレバレッジ」とされる。

　つまり2倍のETF等なら、委託保証金率は60％となり手持ち資金の1.7倍弱の取引しかできなくなる。3倍のETF等なら、90％となり約1.1倍の取引しかできない。どのようなケースでも信用取引と商品のレバレッジを合わせて3.3倍が最高になる。

　ここ最近はレバレッジ型のETF等が人気で、特にコロナバブルでアメリカのNASDAQ総合指数が高騰したためにNASDAQのレバレッジ型ETF、通称「レバナス」の人気が高まっていた。

　だが2022年になって世界的に金融引き締めが始まるとNASDAQ総合指数も暴落し、2022年の1年間では33％安となった。暴落によってレバナスに投資をしていた多くの投資家が多額の損失を抱えたため、その現状を見た政府がETF等信用取引の委託保証金率変更に踏み切ったと思われる。

　日本のFXはかつて100倍レバレッジが可能だったが、ハイリスク過ぎるために最大25倍に規制された。レバレッジ型ETF等もリスクが高いので規制もやむなしといったところか。