Bybitが史上最大のハッキング被害に遭う

海外の大手仮想通貨取引所であるBybitが22日未明に、同社がハッキングの被害に遭いイーサリアム他の仮想通貨約2,200億円分が流出したことを公表した。このニュースは世界の仮想通貨業界を震撼させ、22日未明から午前にかけて仮想通貨市場が下落した。

Bybitの業務は継続

　昨年11月にトランプ大統領が選挙で勝利後に仮想通貨市場は高騰しており、ビットコインは一時1,700万円をつけた。もはや金融商品としての仮想通貨の価値を否定する者はいないだろう。

　しかしいくら世界的に普及しても、仮想通貨にはハッキングされて流出するリスクがあることを忘れてはならなかった。日本時間の22日未明に、海外大手仮想通貨の取引所のBybit（バイビット）がハッキング被害に遭ったことを公表した。

　まずBybitという取引所について少し解説すると、Bybitは今や取引量ではバイナンスに次いで世界で2位の規模を持つ大手取引所。本社はUAE（アラブ首長国連邦）のドバイにあり日本では仮想通貨取引業として登録していないにも関わらず、日本語でのサービスを提供しており、日本人で口座を持っている投資家も少なからずいると言われる。

　だがこの点を金融庁はよく思っておらず、これまで何度か日本居住者相手にサービスを提供しないよう警告していた。また今月になってアップルとグーグルに対し、日本人向けのアプリ提供ストアからBybitのアプリを削除するよう要請していた。

　そして今回のハッキング被害であるが、まずイーサリアム（ETH）が約40万枚も流出した。2月22日現在のイーサリアムのレートは約40万円なので、単純な計算でもそれだけで約1,600億円の被害になる。そしてその他の通貨も合わせると、被害額は約14億6000万ドル（約2,170億円）と発表された。

　事件公表後、仮想通貨関連企業であるArkham Intelligence（アークハム・インテリジェンス）が事件について調査した結果、北朝鮮のハッカー集団・Lazarus Group（ラザルス・グループ）が背後にいるとのことだった。

　Bybitは事件後も業務を引き続き行っており、またCEOは「この損失は補填可能」と発言していた。

　だがこの事件が仮想通貨業界を震撼させるものであることは間違いない。事件公表後は仮想通貨市場が急落し、ビットコイン（BTC）は20日夜の1,500万円から21日未明には一時1,420万円と最大で5％ほど下落。

　渦中の仮想通貨はもっと下落率が高かった。イーサリアムは20日夜の42万8000円から21日未明には一時39万2000円と8％以上下落。またBybitの独自トークンであるマントル（MNT）は、20日夜の157円から21日未明には一時125円と約20％も暴落した。

　日本では2018年1月にコインチェックからネム（XEM）が約600億円分流出した事件があり、それが日本史上最大の仮想通貨ハッキング事件となった。今回のBybitは当然ながらその規模を上回っており、また世界でも最大の仮想通貨流出事件になると見られる。

　Bybitのような世界2位の取引所でもハッキングの被害から逃れられないなら、仮想通貨を取引している限り逃れることはできないのかもしれない。唯一の救いは、Bybitのような大手なら被害を補償してくれるだけの資金は用意してあるという点だ。