2023年度の税制改正大綱が決定

政府が16日に2023年度（令和5年度）の税制改正大綱を決定した。今回は金融取引関連の税制で改正されるものが多く、投資家は知っておいた方がいい内容が多い。

NISAは大幅拡充

　政府が16日に2023年度（令和5年度）の税制改正大綱を決定した。毎年公表されるこの大綱だが、今年は金融取引に関連する改正が多い。NISAの拡充などはこれまで何度か記事でも述べてきたが、正式決定されたので改めてここで確認してみる。

　まず今回はNISA（少額投資非課税制度）の大幅な拡充が含まれる。もともと2023年末をもって現行のNISAは終了し、2024年から新しい制度になることは決定されていた。そして子ども向けのジュニアNISAは廃止される。

　それに加えて今回まとめられた改正では、これまで併用できなかった一般NISAとつみたてNISAが1人で両方とも使えるようになる。これはかなり大きい。そしてNISA自体が恒久化され、さらに一般NISAは5年、つみたてNISAは20年とされていた購入後の非課税期間を無期限にする。

　またこれまでの利用上限額は、一般NISAが年間120万円を5年分で600万円、つみたてNISAが年間40万円を20年分で800万円だった。

　それが改正後は年間の利用上限額は、一般NISAに相当する「成長投資枠」が240万円、つみたてNISAに相当する「つみたて枠」が120万円の計360万円となる。また生涯利用枠は合計で1,800万円となり、そのうち1,200万円は「成長投資枠」に充てられる。

　次に仮想通貨税制では、法人に対する期末時価評価課税から仮想通貨を除外する。期末時価評価課税下では、法人が仮想通貨を保有すると売却しなくても期末時に含み益になっていると課税が発生する。これを撤廃して、売却するまで課税が発生しないようにする。

　この課税のために企業がトークンを発行して資金を調達するIEOがやりにくいという問題があったので、撤廃されればIEOが増えると期待できる。

　そして起業支援のために、スタートアップ支援の税制優遇措置を設ける。具体的には株式売却益で自ら起業したり一定の条件を満たすスタートアップ企業に再投資した場合、20億円を上限として株式売却益への課税を免除するというものだ。

　20億円はかなり大きい金額なので、この税制優遇措置で起業やベンチャー投資などが活性化されることも期待できる。しかし自らの起業も含まれるとなると、この制度目当てで幽霊会社を立ち上げるような行為も可能になる。まだ詳細は明らかではないが、そのような幽霊会社の起業では適用されないようなルールがあると考えられる。

　今回は全体的に投資に有利になる税制改正が多い。これらの改正で政府が掲げる「貯蓄から投資へ」が多少なりとも進むことが期待できる。