1人のインフルエンサーに振り回されたゲームストップ

米のゲームストップという株は、2021年前半に突然暴騰したことがあった。そして最近になって突然ゲームストップ株が再度2回にわけて高騰したが、すぐに暴落してほぼ元の水準に戻るという奇妙な動きを見せた。これは全て1人のインフルエンサーの影響であった。

2021年の暴騰のきっかけの人物

　アメリカにゲームストップ（銘柄コード：GME）という株式がある。ゲームストップはゲームの販売会社であるが、ゲームはここ最近ダウンロード販売やスマホでできるゲームが増えており、昔のようなゲームソフトの販売業界は伸びていない。そのため企業としてのゲームストップは低調な業績が続いていた。

　ところが2021年明けに突然この株が暴騰したことがあった。ゲームストップ株は2020年後半には5ドル前後で推移していたが、2021年明けから暴騰して1月中に一時120ドルをつけた。

　その詳細はこちらの記事に書かれている。なお記事中ではゲームストップ株の価格として「500ドルに接近」との記述があるが、ゲームストップ株は2022年に4分割をしている。当時の500ドルは分割後の125ドルに該当するので、現在のチャートで見れば2021年1月の高値は120ドルで正しい。

　このような暴騰が起こった原因は、ネットの掲示板で個人投資家に対してゲームストップ株を買うような呼びかけが行われたからと言われる。しかしそのような原因で上がった株は高値に留まることはできず、2021年の残りの時期から22年、23年にかけてゲームストップはジリジリと値を下げていった。

　今年5月上旬も16～18ドルの低い水準で推移していたのだが、5月13日には74％暴騰して30.45ドルで終了。さらに14日には一時130％高の64.83ドルをつけ、終値は60％高の48.75ドルだった。

　この暴騰は2021年に掲示板呼びかけを行ったと言われる「Roaring Kitty」とのネット名を持つ人物が、X（Twitter）上で突然発言を再開したからであった。Roaring Kitty氏は2021年の騒動以降は沈黙を続けていたものの、13日になってゲームをプレイしている男性のイラストなどを投稿した。

　だがRoaring Kitty氏が特にゲームストップ株に影響のあるような発言をしなかったためにこの高騰は短期的なもので終わり、17日には早くも一時20ドルを割ってほぼ高騰前の水準まで戻った。

　ところが今度は先週6日に、Roaring Kitty氏が突然「YouTubeで生配信を行う」と言い出した。5日の終値は31.57ドルだったゲームストップ株は、この発表を受けて6日は47％も暴騰して46.55ドルで終了した。

　そして7日に予告通り生配信を行ったのだが、ゲームストップについて語ったもののそれ以外で特に投資家にとって買い材料となるような内容はなかった。そのため7日は40％も暴落して5日の終値を下回る28.22ドルで終了。そして週明け10日も12％続落して24.83ドルで終了した。2日間で6日の終値から約半分にまで暴落してしまった。

　結局ゲームストップ株は5月中旬と先週の2回暴騰したのだが、どちらもすぐに暴落して元の水準に戻っただけ。このような極端な動きは全て1人のインフルエンサーの行動の影響であった。