高金利通貨は下落リスクも他通貨より高い

10月にアメリカとトルコが相互にビザ発給を停止してからトルコリラの下落が続き、11月21日になってついに2005年のデノミ以来の最安値を更新した。トルコリラは「高金利通貨」の代表的な存在だが、高金利通貨は下落リスクが高いことを改めて知らされた形になった。

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トルコは高インフレ体質

トルコリラの下落が続いている。トルコでは昨年7月に軍部によるクーデター未遂事件があり、それ以来エルドアン政権が独裁色を強めていった。そのために民主主義を原則とする欧米諸国と対立が深まり、先月にはついにアメリカと相互にビザを発給停止するという事態になった。

トルコの欧米との関係悪化によるリラ売りに加え、アメリカ経済が好調なことからくる米ドル買いも加わり、最近はトルコリラが特に米ドルに対して急落。11月21日には1米ドル＝3.97リラ台という2005年のデノミ以来の最安値をつけた。ここまで来ると1米ドル＝4リラ突破も時間の問題と思われる。

トルコリラはいわゆる「高金利通貨」として知られている。国の政策金利が高いために、FXでリラの買いポジションを持っていればスワップ金利が多くもらえる。それを狙ってリラ買いをする人も少なからずいる。現在のトルコの政策金利は8％と高く、またリーマンショック前の2006～07年頃には17％にもなっていたことがあった。

しかし国が金利を高く維持するには理由がある。日本やアメリカなど主要国よりも高金利にしている国は、通貨価値が安定していないため、通貨を下支えするために金利を高くしているのだ。つまり金利を上げないとすぐに通貨が暴落してしまう可能性がある。

そういった国の通貨は、たとえ金利が高くても下落していくリスクが高い。トルコは戦後の歴史上、インフレが高い時期が長く続いていた。トルコの1980～2005年のインフレ率は、毎年50～100％がずっと続いた。年間100％のインフレというのは、来年になったら物の値段が2倍になっている社会を意味する。それが10年間続いたら1024倍になる。

このような極端なインフレがずっと続いてきたトルコだが、2005年1月にそれまでの100万リラを新1リラとするデノミを実施。これが効果を発揮したのか、その後はしばらくインフレが落ち着いてきた。また為替市場でのリラの価値も比較的安定し、2005～13年頃は1米ドル＝1～2リラの範囲に収まっていた。

ところが2013年頃からアメリカ経済が好調になってきたこともあって、米ドル高・リラ安が進行。2016年のクーデター未遂以降のトルコの独裁化と、欧米との関係悪化がそれに拍車をかけた。そして今はすでに述べたように、1米ドル＝4リラに近付いている。リーマンショックのあった2008年には1米ドル＝1リラ近くにあったので、9年でリラの価値は4分の1近くに落ち込んだ。

このようにリラは下落が続いているが、これはリラに限った話ではなく、南アランドなど他の高金利通貨にも言える。高金利には理由があり、そういった通貨は価値下落のリスクが他の通貨より高いのだ。