販売再開も前途険しいかんぽ生命

不適切契約問題のために昨年7月から販売を自粛していたかんぽ生命が、来週5日からついに販売を再開する。しかし今週になって小規模とは言え新たな問題も見つかっており、かんぽ生命の前途はかなり険しいと思われる。

通院の事実を隠すよう助言

　不適切契約問題のために昨年7月から約1年3ヶ月販売を停止していたかんぽ生命だが、来週5日からついに再開する。

　かんぽ生命の不適切契約問題は、「元官業」にあるまじき悪質さと規模で行われていたために、昨年6月に発覚した当時から大問題となった。具体的には顧客にとって不利益になるのに保険契約を乗り換えさせたり、現在の保険を解約させずに新しい保険を契約させ新旧両方の保険料を払わせる二重契約といった悪質行為が数万件以上行われていたという。

　日本郵政グループは日本郵便、ゆうちょ銀行、そしてかんぽ生命の3社が主軸となっている。しかし日銀の超低金利政策が長期化しているため、国債利回りが下がり以前まで国債で資金を多く運用していたゆうちょ銀行は収益を圧迫されてきた。

　そのような状況でかんぽ生命は売り上げを上げるために、現場の販売員に対して厳しいノルマやプレッシャーをかけ、その結果として全国で不適切な販売行為が行われることとなった。不適切販売は昨年7月で一旦停止したが、かんぽ生命の販売自体がストップしているために業績は厳しい状況が続いている。

　厳しい状況はグループ3社の株価からも明らかだ。持株会社の日本郵政（銘柄コード：6178）は、2015年11月に上場した時の初値が1,631円だった。そして上場から5年近く経った2020年9月30日の終値は、715.8円と上場時の半分以下となっている。

また今年は2～3月に株式市場が大暴落した後、4月以降は大リバウンド相場となった。だが日本郵政株は3月の安値が728.5円だったのだが、9月30 日の安値は前述の通り3月より低くリバウンド相場に乗れていない。

　ゆうちょ銀行（銘柄コード：7182）も同様で、2015年の上場初値は1,680円だったが2020年9月30日の終値は821円と半額以下の惨憺たる株価となっている。ゆうちょ銀行は今年3月の安値が826円だったので、リバウンド相場でもほぼ上昇していない。

　むしろ昨年問題を起こしたかんぽ生命（銘柄コード：7181）の株価はまだマシで、上場初値の2,929円に対し2020年9月30日の終値は1,651円と半分を下回っていない。さらに3月の安値が1,137円だったので、その後のリバウンド相場にも乗ってきた。

　そして10月5日からようやくかんぽ生命の販売が再開できるという今週になって、法人契約を行う際に顧客が通院している事実を隠すよう助言していた問題が明らかになった。この行為も法令違反に該当するが、大規模に行われていたものではないために来週5日からの再開を延期することはないという。

　10月5日から販売を再開すると言っても、当面は積極的な営業活動は行わず、窓口での販売とお詫び回りのみを行うという。来年から積極的な営業活動を再開するとの見通しを持っているものの、前途はかなり険しいと思われる。