米でテラ社とSECが和解へ

2022年5月にテラショックを引き起こして仮想通貨市場を混乱させたテラフォームズ・ラボ社に対し、米証券当局のSECは昨年提訴した。そして提訴から1年あまり経った今週になり、テラ社が日本円で数千億円規模の巨額の罰金を支払うことで和解した。

すでに4月に有罪判決

　2022年5月に起こったテラショックから2年あまりが経ったが、仮想通貨市場を震撼させた事件として多くの仮想通貨業界関係者が記憶している。

　この事件は韓国のテラフォームズ・ラボ（以下、「テラ社」）が発行していたテラ（UST）というステーブルコインのアルゴリズムが突然崩れ、米ドルとのレート連動ができなくなったために起こった。その影響で同名の仮想通貨・テラ（LUNA）がほぼ無価値まで大暴落し、また仮想通貨市場全体も下落してテラショックとなった。

　そしてテラショックから約9ヶ月経った2023年2月になって、アメリカの証券当局であるSEC（証券取引委員会）が、テラ社と創業者のド・クォン氏を提訴した。その内容は「USTのレート固定が崩壊するとLUNAにも多大な影響が及ぶのに、それを投資家に事前に説明しなかった」「LUNAが将来値上がりするような虚偽の説明をした」「韓国のスマホ決済・チャイは決済にテラのブロックチェーンを利用していると説明されていたが、実際には使われていなかった」などであった。

　この裁判で最初に大きな結果が出たのは今年の4月5日で、この日に陪審員の判断によってテラ社とクォン氏への詐欺の告発に対して「有罪」との判決が下された。なおクォン氏は韓国でも同様に刑事告訴されているが、本人は欧州のモンテネグロに潜伏していると見られ、引き渡し手続きが進められている。ただしアメリカと韓国のどちらに引き渡すかなど調整項目が多く、なかなかスムーズには進んでいない。

　アメリカの裁判ではまず「有罪か無罪か」が決まり、量刑は後日決められることが多い。この裁判でも4月5日の有罪判決の後に量刑を決められる裁判が行われる予定だったが、判決を待たずして両者が和解との情報が今週流れた。

　その内容は、テラ社がSECに対し不当利得返還、判決前利息、そして民事罰金を合わせて44億7000万ドル（約7,000億円）の巨額の支払いを行い、米国内においてテラ社が今後一切仮想通貨の販売をしないとの約束も盛り込まれた。

　2022年の5月の破綻前には2種類のテラの時価総額は合わせて日本円で数兆円にもなっていたのだが、それが破綻によって無価値になりクォン氏も犯罪者になった。時代の寵児だったが倒産で一気にどん底に落ちたFTXのフリードCEOもそうだが、仮想通貨の世界は浮き沈みが非常に激しい。