現在の超円安はいつか是正される

2021年春以降の米ドル/円は主に110円付近で推移しており、あまり動きがない。110円という数字だけ見るとそれほど円安には見えないかもしれないが、実は実質実効為替レートで見た現在のレートは1970年代と同等の超円安水準にある。このような極端な為替水準はいつか是正され円高に動くことが考えられる。

変動相場制前と同等の水準

　今年の米ドル/円は1～3月に急激な円安になったが、春以降は110円前後で停滞しておりあまり動きがない。

　ところでこの110円というレートをどう思われるだろうか？円安だと思うか、円高だと思うかは見方によって異なる。2010年前後の民主党時代には1ドル＝80円前後の水準が続いたので、その当時から比べれば円安だ。

　一方2000年代には120円台や130円台をつけたこともあったので、その水準と比べて円高だと考える人もいるだろう。

　しかし実質実効為替レートで見ると、現在の水準は1970年代以来の超円安水準となる。実質実効為替レートとは、通常の為替レートに両国の物価水準などを加味した調整を入れて算出したレートのこと。

通常の為替レートのように2通貨の相対レートでは表わさず、2010年を100としてこの年との比較数値として表わされる。数字が100より大きくなれば円高で、100より小さい数字だと円安を表わす。

　そして2021年夏の実質実効為替レートは、70～71と相当な円安水準にある。この水準は1970年代、それも1973年2月に先進国が変動相場制に移行する前の頃と同等の円安水準になる。

　1973年2月以前は固定相場制を採用していたために、為替レートは需給で動かずに円は過小評価されていたと言われる。そのため変動相場制に移行されるとすぐに円は買われ、実質実効為替レートも75付近まで円高になった。

　とはいえ現在が円の最安値というわけではなく、安倍政権で1ドル＝125円になった2015年夏には実質実効為替レートは67にまでなった。

　現在の70～71が相当な円安水準であることは、日米の物価や賃金の差を見るとわかる。現在の1ドル＝110円で比較するとアメリカは食料品から不動産まで日本よりかなり高くなっているが、賃金も高い。

　為替が過剰に円安になっていることで、日本は物価・賃金ともにアメリカよりかなり低水準になってしまった。しかしこのような歪みは永遠には続かず、いずれは是正されるものと思われる。

　是正がどのような形で起こるかは予想できない。円安になっているのは日銀が異次元緩和を続けていることが大きな要因であるため、将来何らかの理由で日銀が緩和を止めたらそこから大きく円高に動くことが考えられる。

　アメリカでは物価が上がり、日本では停滞が長期間続いている。このまま円安が是正されなければ両国の物価差による歪み（アメリカからの輸入品の価格高騰など）が表面化してくるので、すぐではないかもしれないがいつかは是正される日がくるだろう。