次々と買収・提携を進めるSBI

ネット証券最大手のSBI証券を運営するSBIホールディングスが、今年になって金融業界他社の買収や他社との提携を次々と進めている。金融業界における同社の存在感はますます高まると思われる。

仮想通貨取引所も買収

　店舗を持たないネット証券が日本に登場したのは、インターネットが普及し始めた時期とほぼ同じ、2000年頃だった。それから20年ほど経った現在では、すでにネット証券業界では上位5社ほどの顔ぶれが固定されてきた感がある。

　ネット証券業界で最大手、あるいは1位と言われているのがSBI証券だ。同社は2020年になって総合口座数が500万口座を超え、さらに9月には570万口座を超えてそれまで日本の証券業界で不動の1位だった野村證券の口座数を抜いた。パンデミックという特殊な要因はあるが、証券業界でもネット専業がリアルな店舗を持つ業態を抜いたことを象徴する出来事となった。

　SBI証券を統括するのが持株会社のSBIホールディングス（銘柄コード：8473）。そしてSBIHDは今年になって、金融業界の様々な企業の買収や企業との提携を発表している。

　4月にはメガバンクを抱える三井住友フィナンシャルグループ（銘柄コード：8316）（以下、「SMFG」）と戦略的資本・業務提携をすることで合意。7月になるとSBIグループのアプリ用証券会社・SBIネオモバイル証券の株式20％を、SMFGが取得することで合意。

　同時に三井住友カードとSBI証券の提携によって、SBI証券上で投資信託を売買する場合は三井住友カードで決済ができるサービスも発表した。

　そして同じく7月末に、ネット証券業界で中堅と言われるライブスター証券の買収を発表。ライブスターは同じネット証券なのでこの買収で新サービスなどが生まれる可能性は低いが、同社の約20万口座をSBIが取り込むことになる。

　また10月になって、仮想通貨取引所のTAOTAOを買収した。TAOTAOはネット検索のYahoo!を運営するZホールディングスの傘下として運営されてきた仮想通貨取引所。今年初頭頃から中国発の海外の仮想通貨取引所大手・Binanceと提携に向けて交渉を続けてきたものの、10月になると合意に至らず交渉終了と発表。そしてその直後に、TAOTAOがSBIによって買収されることが発表された。

　さらに10月22日には、群馬県に拠点を置く第二地方銀行の東和銀行（銘柄コード：8558）との資本提携を検討していると報じられた。SBIはすでに地銀4行、島根銀行、筑邦銀行、清水銀行、福島銀行と提携している。

　そして買収・提携ではないが、10月19日からは不動産仲介業務も開始した。特に今年になって買収・提携などを利用して金融サービスの幅をますます広げているSBIHDは、日本の金融業界にとって揺るぎない巨大な存在になってきた。