業務改善命令、訴訟…まだ続くレセプト債破綻の後始末

去年11月に発行会社が破綻した、医療機関の診療報酬請求権を担保とした債券「レセプト債」は、今でも販売していた証券会社に対する業務改善命令や、投資家による訴訟など影響が続いている。

レセプト債の過去記事はこちら。

アーツ証券は登録取り消し

レセプト債は海外では多く販売されている国もあるが、日本ではあまり一般的ではなかった。日本では国民が医療機関を受診するにあたって、健康保険に入っていれば3割以下だけ自己負担分を支払い、残りは医療機関が健康保険組合に請求する。

レセプト債を発行する会社は、診療報酬の請求権（レセプト）を買い取り、そしてそれを担保にして債券を発行するのだ。

日本でも過去何年かレセプト債を発行していた会社があり、それは7社の証券会社によって販売されていた。ところが昨年11月に、発行していた企業が全て破産申請をしてしまった。

レセプト債を発行していた企業は、「㈱オプティファクター」「㈱メディカル・リレーションズ・リミテッド」「メディカル・トレンド・リミテッド」「オプティ・メディックス・リミテッド」、そして「㈱エム・アイ・ファシリティズ」の5社。その中でもオプティファクターが中心的な存在だった。

発行会社が破産申請をするまでに発行されたレセプト債は、総額で227億円ほどあったと言われる。そして破産申請によって、それらの大部分が償還不可能になってしまった。

このような結果になったため、販売していた7社の証券会社の責任が問われるようになる。レセプト債を販売していた証券会社は、アーツ証券、田原証券、竹松証券、六和証券、上光証券、共和証券、おきなわ証券の7社だった。どれも中小規模の証券会社で、野村や大和といった大手は入っていない。

7社の中でもアーツ証券は、レセプト債の運用が債務超過に陥っていることを知っていながらそれを投資家に伝えなかったことが明らかになった。そのために今年1月29日に、金融庁から金融商品取引業の登録取り消しという最も重い行政処分を受ける。金融業が続けられなくなったアーツ証券は、2月1日に東京地裁に破産を申請した。

しかしレセプト債の後始末は、それだけでは終わらない。2月26日に、金融庁はアーツ証券以外の残った6社に対し、金融商品の販売時に顧客にしっかり説明をするよう求める、業務改善命令を出した。

そして被害を受けた投資家は全国で被害者の会を結成。損失の賠償を求め、近いうちに販売していた証券会社に対し訴訟を起こす構えだ。

債券は株式やFXなどと比べ比較的ローリスクな金融商品と言われるが、発行体がしっかりしていない債券への投資はリスクが高いということだろう。