株価下落が続けば日銀は債務超過へ

2月下旬以来世界的な株安が続いており、9日にはついにNYダウが2,013ドル安と過去最大の暴落を見せた。株価の下落自体も悪い話だが、日本では株価が下落することによって日銀が債務超過に陥るという問題が生じてくる。

日銀は30兆円以上のETFを保有

COVID-19（新型コロナウイルス）の世界経済への悪影響を懸念した世界的な株安は、今週になってついに3週目に突入した。9日はNYダウが2,013ドル安と大暴落し、今年の2月27日につけた1,190ドル安を大きく上回る過去最大の下落幅となった。

この3週間COVID-19の猛威はさらに拡大し、特に欧州ではイタリアで先週北部の人口約1,600万人の範囲が封鎖と決定。今週になるとそれがイタリア全土に拡大された。イタリア以外でも、英仏独など主要国で感染が広がりイベントの中止や学校・施設の閉鎖などが相次いで発表されている。

日本でも株安は止まらず、日経225平均は9日に20,000円を割ったばかりか、10日には一時的だが19,000円も割った。株安自体も悪い話だが、日本の場合は株安によって他国と違う問題が浮上してくる。それは日銀が保有するETFの問題だ。

日銀は異次元緩和政策の一環として、2013年4月から大規模なETF購入を行っている。当初は年間1兆円とされていた購入額は、緩和の効果を高めるためにその後3兆円、6兆円とどんどん増額されてきた。

すでに7年にも及ぶETF買いの結果、日銀は現在30兆円以上のETFを保有していると言われる。しかしETFである以上株価が下がれば当然含み損を抱えることになり、それが膨らむと日銀が債務超過に陥る恐れがあると見られている。

黒田総裁は今週10日に参議院で発言し、この点について述べていた。黒田総裁によると、昨年9月末時点で日銀が保有するETFの損益分岐点は、日経225平均の19,000円付近とのことだった。そして昨年10月以降もETF買いを続けているため、現在では損益分岐点は19,500円付近まで上昇しているだろうと述べた。

損益分岐点とは、そこで損益が±0になる点を指す。つまり現在では日経225平均が19,500円付近になれば、日銀の保有するETFは利益がなくなり、19,500円を下回ると含み損になる。

そのため19,500円を越えてさらに下がると、日銀の損失が膨らみ最終的には債務超過になる恐れがある。日銀は株価が高かった2017～19年に特に多く購入してきた。日経225平均が10,000～16,000円にあった2013年は合計で1兆円程度しか買わず、2014年も1兆3000億円程度だった。

ところが日経225平均が20,000円以上にあることが多かった2017～19年の3年間は、毎年5～6兆円程度と多く買った。これでは平均取得価格はかなり上がっており、今後株価が下落すれば損失は膨らんでいく。そして日銀を債務超過に陥れる。

中央銀行が債務超過になったような例は日本の歴史上あまりなく、実際にそうなったらどのような措置を取る必要があるのか、あるいは何もする必要がないのか不透明な部分が多い。だからこそ避けた方がいいのだが、日銀が過剰なETF買いを続けるといつか債務超過に陥るリスクは高い。