最近拡大するNT倍率が意味するもの

日経225平均とTOPIXの倍率を表すのがいわゆるNT倍率だが、最近これが拡大傾向にある。これは国内株式市場において、何を意味しているのだろうか？

最近のNT倍率は12倍以上

すでにご存じの方も多いと思うが、NT倍率とは日経225平均とTOPIXの単純な倍率である。11月13日現在でいうと、日経225平均が17,400円程度、TOPIXが1,400程度なので、NT倍率は12.4倍程度になる。しかしこの12.4倍というNT倍率は、ここ10年間で見てもかなり高い方なのだ。数年前まで、NT倍率は10倍前後で推移していた。

長期的なNT倍率の推移を振り返ると、1990年代にはNT倍率は12～14倍だった。これは現在の12.4倍という水準より高めだが、この当時は日経225平均の構成銘柄が現在とかなり違うので、それが理由である。

その後2000年4月には、過去最大となる日経225平均の30銘柄同時入れ替えが行われた。この時の入れ替えのためにNT倍率は大きく下がり、以後2000年代は10倍前後で推移するようになる。

しかし2009年頃から、NT倍率は少しずつ上昇を始めて現在のような12倍を超える水準となった。去年頃からNT倍率は12倍台に入っているが、これはまさに銘柄の大幅入れ替えがあった2000年4月以来の12倍となる。

ではなぜNT倍率は上昇しているのか？TOPIXが東証1部の全銘柄（約1700）から計算されるのに対し、日経225平均は225銘柄のみだ。しかも、日経225平均はユニクロ（ファーストリテイリング）やソフトバンクなど、特定の銘柄が値動きに大きく影響している。NT倍率が上昇しているのは、つまりそういった日経225平均の中で比重が大きい銘柄の株価が上がっているためだ。実際ユニクロやソフトバンクの株価は、ここ数年好調に推移している。

また日銀が行っている異次元緩和の影響でもある。日銀は異次元緩和によってETFを膨大な額で購入し続けている。詳しい説明は長くなるので省くが、日銀のこの政策によって日経225平均タイプのETFの方が、TOPIXタイプよりも多く買われている。そのため結果的に日経225平均が大きく上昇しているのだ。

NT倍率は単なる2指数の倍率なので、これをもってして将来的に株式市場が上がる下がるを予想することはできない。NT倍率を使って直接利益を出す方法をあえていうなら、日経225平均とTOPIXのETFなどを利用して裁定取引をすることができる程度だ。しかし国内株式市場の動向を表す1つの指標として、覚えておいても損はない。