最近報道が増えた円キャリートレードとは

8月1日から5日にかけて日本の株式市場が大暴落し円は暴騰した。6日以降株式市場は落ち着いてきているが、マスコミなどでは「円キャリートレード」という言葉が出てくることが増えた。この円キャリートレードがこれまでの円安の進行、そして今回の急激な円高の大きな要因となったと言われる。

2000年代にも行われた

　8月に入って金融市場が大変動している。7月31日に日銀が0.25％の利上げを発表しその後植田総裁が「追加利上げもありえる」と発言したことで、翌日以降東京株式市場が歴史的な大暴落。8月1日には日経225平均が975円安、2日には2,216円安、そして週明け5日には史上最大の下げ幅となる4,451円安をつけた。

　同時に急激な円高も進行した。31日の日銀政策金利発表前は1ドル＝153円台だったが、政策金利発表と植田総裁の発言を経て円高が始まり、わずか3営業日後の5日には一時利上げ前より12円も円高の141円台をつけた。

　6日になると日経225平均は史上最大の上げ幅となる3,217円上昇し、7日以降はようやく株式市場が落ち着いてきた。

　そして今回の大暴落が起こった頃から、マスコミでは「円キャリートレード」という言葉が出てくることが増えた。この円キャリートレードが、2022年頃からの円安と今回の急激な円高の大きな要因になっている。

　円キャリートレードとは、金融機関などが金利の低い日本円で資金を調達して、それを米ドルなどより高金利な通貨に替えてから運用する手法。この過程において円から外貨への両替が発生するため、円キャリートレードが増えると円安になると言われる。

　2022年頃から各国が利上げを行い日銀はゼロ金利を維持していたため、日本円と他の通貨との金利差が開き円キャリートレードが活発に行われて円安が進行してきた。そして日銀は31日に金利を0.25％引き上げ、「追加利上げもある」と発言したことで円キャリートレードの解消が大規模に行われて円高になった。

　とはいえ円キャリートレードはまだ数百兆円、あるいは1000兆円以上残っていると言われるので、それらの解消が実施されれば今後さらに円高が進むことも考えられる。

　円キャリートレードが活発に行われマスコミでよく報じられていたのは、これが初めてではない。2005～08年頃は現在と同様に日本がゼロ金利で他の主要国は金利を引き上げていたため、円キャリートレードが大規模に行われて円安トレンドになった。

　この時は2008年秋のリーマンショック前後に株が暴落し円キャリートレードの解消が進み、為替市場は一気に円高になった。

　2010年代になると日本はゼロ金利を維持し異次元緩和を開始したものの、この時期は他国も超低金利政策を維持していたために円キャリートレードはあまり行われなかった。

　そして2020年代になり他国が金利を上げ始めると、また円キャリートレードが大規模に行われるようになった。2000年代と同様にその影響で円安になったが、2008年のリーマンショックのような金融ショックが今後起こるとそれらのポジションが一気に解消され円が急騰することもありえる。