普及が進むダークプールだが規制が課題

日本の株式市場ではここ最近ダークプールと呼ばれる売買方式が少しずつ広まってきている。しかしこのダークプールにはまだ不透明な部分が多く、政府では規制に向けて議論が行われているという。

個人向けは2018年から

伝統的な株式の売買は、投資家が出した注文を証券会社が取り次ぎ証券取引所に流す。そして証券取引所が買い注文と売り注文をマッチングさせ、マッチングが成立したら約定するというものだった。

それに対してここ最近は日本でも、「ダークプール」と呼ばれる証券取引所を通さない売買方式が普及してきている。ダークプールの「ダーク」とは闇という意味だが、この方式ではその名前の通り注文などが表に出ないまま約定が成立する。

具体的には、証券会社が受けた注文を取引所に流さずに、証券会社の内部だけでマッチングをして売買を成立させてしまう方法だ。これは伝統的な売買と何が違うかというと、取引所に注文を流さないので、株式市場の「板」に注文が出ないまま約定する。これがダークプールと呼ばれる理由でもある。

証券会社は機関投資家向けには以前からダークプール方式を提供していた。機関投資家は大口で注文を出す者も多く、注文を板情報として出さないことを望む者も少なからずいる。

それが2018年から、証券会社が個人投資家向けにダークプール方式を提供するようになってきた。これは主にSOR（スマート・オーダー・ルーティング）という形で提供されている。SORとは、ダークプールを含めたいくつかの売買方式の中から、投資家にとって最良のものを選んで自動的に約定させる仕組みのこと。

現時点では個人投資家にとってダークプールのメリットは、既存の売買方式に比べて有利な価格で約定することが可能な点や、（証券会社によるが）売買手数料が安くなることがある点だ。

とはいえメリットばかりではない。取引所に注文が出ずに証券会社の中だけで処理されるダークプールなので、本当に投資家にとって有利な売買を行っているのか、外部の者にはわからない。実は証券会社に有利なように売買を成立させているかもしれない。

そこで今年の2月から、金融庁がダークプールの規制に向けて議論を始めた。ここで行われた議論は規制案としてまとめられ、今後東証のルール改正や法改正などに活かされる。海外で規制されている例では、ダークプールで注文を処理する場合は、必ず取引所に出すよりも有利な価格で約定するように決められている場合がある。

個人投資家には去年から提供されるようになったばかりのダークプールなので、まだルール面で未成熟なところがある。しかし規制が進めば、個人投資家にとって気軽に利用できる制度になるかもしれない。