日本の家計金融資産が2,000兆円に迫る

日銀が17日に2021年4～6月期の資金循環統計を公表。その中に含まれていた家計の金融資産部門は、史上最高額の1,992兆円で初の2,000兆円突破にあとわずかと迫った。

株式は最高額ではない!?

　日銀が17日に2021年4～6月期の資金循環統計を公表した。資金循環統計は政府、企業、金融機関、家計などあらゆる主体の金融資産のストックやフローについてまとめた統計。

　その中の家計の金融資産部門は、6月末時点で史上最高額の1,992兆円となり初の2,000兆円に迫っていたことがわかった。

　家計の金融資産が最高額になったと聞くと、多くの人が「株式市場の高騰が続いているからだろう」と思うかもしれない。もちろん最高額に達した要因の1つは株高で家計の株式資産が増えているためであるが、実は株高はあまり大きな要因ではない。

　1,992兆円の内訳を見ると、現預金が1,072兆円で半分以上を占める。それ以外の主な内容は株式等が210兆円、投資信託が89兆円、保険・年金・定型保証が538兆円となっている。

　1,992兆円の中で株式は210兆円で、わずか10％程度でしかない。しかも東京株式市場の時価総額は9月現在で約800兆円とすでに史上最高額になっているのに対し、210兆円は家計の株式資産として史上最高額ではない。

　実は家計の株式資産が200兆円を超えたのは過去に何度かある。1980年代後半に日本の株式市場がバブルになった時代、1989年3月末時点では216兆円だった。この当時の四半期統計はないために次の数字は1990年3月末とバブル崩壊後のため203兆円まで縮小。1989年末時点の統計はないがこの時がバブルの頂点だったので、おそらく220兆円以上はあっただろう。

　また2005～07年も新興株を中心とした株ブームになったので、2006年3月末には208兆円まで増え、翌年07年3月末にも206兆円を維持していた。2008年には多くの人が知るリーマン・ショックの大暴落が起こり、100兆円を割るほどに激減した。しかしその後アベノミクスが始まり2018年9月末には226兆円まで膨らみ、これが史上最高値だった。

　ただし株と違って投資信託の方は、17日に発表された89兆円が最高値となった。投資信託はバブル時代の1989年3月末時点でも38兆円で、2007年の株ブーム時には6月末と9月末時点で75兆円だった。2021年現在はさらに増えているわけだが、これはつみたてNISAやiDeCoといった主に投資信託に投資をする制度が普及していることも一因と思われる。

　だが株式等と投資信託を合わせても300兆円で、それだけで家計の金融資産を1,992兆円の最高額まで押し上げたとは考えにくい。結局は現預金が増えているから、合計額も最高額を更新したのだ。

　家計の現預金はバブル時代の1989年3月末には410兆円、株ブーム時の2006年3月末には785兆円だったものが、2021年6月末には1,072兆円にもなった。これだけ家計の預金が増えているなら日本人は以前より豊かになって、かつ好景気になっていてもおかしくないと思うかもしれない。

　しかし現実はこの1,072兆円は一部の富裕層に独占されており、かつあまり使われずに眠っている。だから好景気にはならずにデフレも続いている日本だが、この眠っている現預金が活用されるようになるのは簡単なことではない。