日本の先物業界が衰退した理由

株やFXと比べて、先物取引を行なっている人の話は日本ではあまり聞かない。そして先物業界に対するイメージもあまり良くない。それは実際に数字に表れており、21世紀に入ってから先物業界はすっかり衰退してしまった。その理由は何だったのか？

営業の手法が失敗した

「投資」というと株やFXを考える人が多く、最近では仮想通貨も一般的になってきた。その一方で先物取引をやっている人は多くないし、そしてイメージ的にもあまり良くないものと思われている。

実際に先物業界はかなり衰退している。日本の先物取引の出来高を見ると、2003年には1億5000万枚ほどあったのに、2015年には2500万枚にまで減った。また業者の手数料収入も、2003年には3500億円あったものが、2015年には230億円と10分の1以下に激減した。

この数字で見ても、先物業界が衰退しているのは間違いない。ではなぜこのようになったのか。一言で言うと、先物業界が個人や法人に対して強引な勧誘などを行なってきたために、業界全体に悪いイメージがつき、結果として投資家離れを招いたのだ。

インターネットが世界で爆発的に普及したのは2000年頃。それ以前からもちろん「投資」は存在していたが、ネットの普及によって個人がリアルタイムで売買できる「トレード」が一般的になった。

そのためこの頃から、先物業者各社は個人や法人に対して電話などで猛烈な営業をかける。そして中にはリスクの説明もせずに、無理に先物を買わせるケースもかなりあった。その結果リスクなどを理解せずに損失を出す投資家が増え、消費者センターへの相談も相次いだ。金や原油などの先物はレバレッジが25～30倍までかけられるハイリスクな取引なので、リスク管理をしないと損失が膨らむ。

先物業者による強引な手法による被害者が増えたため、政府も2008年頃から先物取引の営業に規制をかけるようになった。しかし投資家の間には「先物取引は危ないもの」というイメージだけが残り、営業手法を規制された先物業界は新しい顧客獲得の方法もなく、2010年代には衰退が続いたのだ。

ところがFX業界は違った。FXは決してローリスクな取引ではない。今ではレバレッジ規制がかけられているが、初期は100倍や400倍などのレバレッジで取引ができる業者もあった。

しかしFX業界は電話による強引な勧誘はせず、またリスクについてもきちんと説明をした。結果として、FXで損失を出す投資家は当然存在していたものの、FX業界そのものへのイメージ悪化にまでは至らなかった。だからFXは今でも株と並ぶ投資先の1つとしての地位を確立している。

先物取引はレバレッジ25～30倍程度であることを考えると、現在上限25倍に設定されているFXと比べて特にハイリスクではない。しかし業界としての行動が間違っていたことで、悪いイメージがつき先物業界の衰退につながったのが現実だ。