新興国通貨が下落で通貨危機が迫っている!?

最近になってアルゼンチンやトルコなどの新興国通貨の下落が著しい。この2国は歴史的に見ても通貨が下落しやすく、下落を防ぐために金利を常時高い水準に保ってきた。しかし最近は米経済が好調なこともあり、米ドルに対して急激な下落が続いている。

アルゼンチンは12.75％も利上げ

最近は一部の新興国の通貨下落が目立っている。まずアルゼンチン・ペソは、4月下旬には1米ドル＝20ペソだったレートが1ヶ月で20％も下落し現在では24ペソ台で推移。

ただこの間アルゼンチンが黙っていたわけではなく、4月下旬には27.25％にあった政策金利を27日には3％利上げして30.25％に。そして5月3日にはまた3％利上げをして33.25％にしたのだが、翌日の4日には今度は6.75％も利上げをして40％とした。

政策金利が40％という点も驚くが、わずか8日間で12.75％も利上げをしたのは世界的に見ても異例だ。アルゼンチンはこれだけ極端な利上げをしてようやく通貨の下落を20％程度に収めることができた。利上げをしていなかったら、ペソはさらに下落していただろう。

またトルコリラも下落が続いている。トルコはもともと長期的に通貨の下落が続いた時期が多かった国で、最近も2014年頃からリラは緩やかながらずっと下がってきた。2014年半ばには1米ドル＝2.1リラだったレートは、現在では4リラを超えリラの価値は当時の半分以下になった。最近は特に下落のスピードが速まっている。4月下旬には4.0リラ台にあったレートは、現在では4.6リラに近づき1ヶ月で10％以上下落した。

トルコの場合、エルドアン大統領が利上げに消極的な点が、リラ下落を止めることが難しい理由の1つとなっている。エルドアン大統領は国内の景気を良く保つために、利上げには消極的で緩和的な政策を続けようという考えが強い。エルドアン大統領の周囲にいる閣僚や中銀の中には利上げに積極的な者もいるのだが、エルドアン大統領はそういった動きを抑えつけてきた。

しかしトルコも以前からこうだったわけではない。2014年1月には、リラの下落を食い止めるために、政策金利を4.5％から一気に10％にするという大胆な利上げも行なった。だがその後は段階的に金利を引き下げ、2015年からは7.5～8％に留まっている。

そしてアルゼンチンやトルコの他に、メキシコペソなども最近は下落が目立っている。新興国通貨の下落が続くと、通貨危機になることも考えられる。通貨危機が起こった場合、それがどの程度周辺地域や世界経済に影響するかを予想するのは難しい。しかしトルコの場合、シリアという紛争地に近くシリアからの難民を数百万人も留めているという事情がある。トルコが通貨危機から不安定になったら、周辺地域への影響はかなり大きくなるだろう。