新テラは前途多難を匂わせるスタート

5月上旬に突然レートが崩壊してほぼ無価値になった仮想通貨テラだが、28日には新しいバージョンのテラが流通を開始した。しかし新テラは流通開始から約6時間で80％も価値が暴落する前途多難なスタートとなった。

エアドロップの影響か

　5月上旬に起こったテラの事件は仮想通貨業界を震撼させた。この仮想通貨は韓国のテラフォームズ・ラボという企業が開発し、米ドルにレートをペッグしたステーブルコインのテラ（UST）と、レートが変動するテラ（LUNA）の2種類の仮想通貨が発行されていた。

　しかし5月上旬になり、テラ（UST）の米ドルとのペッグが突然崩れた。それと同時にテラ（LUNA）は価値が大暴落し、短期間のうちにほぼ0円になってしまった。この事件は仮想通貨市場全体に影響し、5月12日にはビットコインが一時330万円台まで下落した。

　その後17日に、テラフォームズ・ラボがテラの再建案を発表。その内容では旧テラはルナ・クラシック（LUNC）と名前を変えて存続させ、新しいテラ（LUNA）を発行する。そしてテラ（UST）に代わるステーブルコインは発行しないとのことだった。

　新テラは旧テラと区別するため、仮想通貨の記事では「テラ2.0」や「LUNA2.0」などと記載されている。この記事では以降、「テラ2.0」と表記することにする。

　テラ2.0は日本時間の28日土曜午後6時頃から流通・売買が開始され、開始直後には米ドルで18ドル程度の値がついた。しかしその後約6時間にわたって暴落が続き、同日午後12時頃には4ドルと開始直後の高値から80％近くも安い水準にまで価値が落ちてしまった。

　この暴落はエアドロップの影響と見られている。エアドロップとは仮想通貨用語だが、簡単に言うと仮想通貨を無償で配布すること。テラ2.0を発行するにあたり、旧テラやテラ2.0の関係者に対してテラ2.0のエアドロップが行われた。

　仮想通貨が無償で配布されたことで、その中から早速売る人々がいたかもしれないし、あるいはいなくてもそのような観測があるだけで売られてレートが下がりやすくなる。初日の80％もの暴落はエアドロップの影響という説が有力だ。

　しかし28日深夜につけた4ドルを底に、その後レートは回復基調にある。29日日曜夜から30日月曜日中は6ドル付近で横ばい。そして31日には海外大手取引所のバイナンスがテラ2.0を上場させるため、バイナンス上場への期待から買いが入り31日火曜早朝には12ドルまで上昇した。

　旧テラの最高値は15,000円付近だった。テラ2.0が31日につけた12ドルは日本円で1,500円程度なので、まだ旧テラ最高値の10分の1でしかない。しかし仮想通貨は10倍になることはザラにあるので、前途多難なスタートではあったがテラ2.0が成功すれば旧テラの最高値を超えることもあるのかもしれない。