損失補填の疑いで東郷証券に強制捜査

東京に本社を置く中小証券会社の東郷証券が、顧客に対して損失補填をしていた疑いで、5日になって証券取引等監視委員会の強制捜査を受けたという情報が流れた。以前はよく行われていたこともあった損失補填だが、最近では損失補填による強制捜査は珍しい。

FXの損失を補填の疑い

そもそも「東郷証券」という証券会社の名前を聞いたことがない人も多いかもしれない。それもそのはず、この会社が東郷証券に社名を変更したのは2017年であり、それ以前は東郷証券という証券会社は存在しなかったからだ。

東郷証券はもともとFXの会社として、2002年に設立された。その当時の社名は「サザインベストメント」と言い、むしろこちらの名前を今でも記憶している人の方が多いと思われる。

サザ社はその後2012年に社名を「efx.com」と変更し、2014年には「efx.com証券」と変更した。そして2017年には現在の東郷証券に変更して現在に至る。創業当時はまだFX業務のみを行っていたのはすでに述べたが、最近になってCFDや株式なども取り扱いを始めている。

そしてもともとFX業者であったこともあり、今回強制捜査を受けたのはFX取引の損失を顧客に補填していた疑いのためだった。では損失補填とは何か？それは顧客が投資をして損失が出た場合、その損失分の金額を顧客に与えてしまうことだ。

この行為は金融商品取引法で禁止されている。投資は自己責任が原則なので、証券会社がいちいち損失を補填していたら、その原則が崩れる。そして証券会社が補填をするとしたら、それはほぼ間違いなくお金を持っている大口顧客になる。損失を補填することで、大口顧客を逃さないようにするためだ。だから小口顧客は決して補填されることはないし、野放しにすると大口との不公平感が強まる。

1980年代後半のバブル時代とそれ以前は、損失補填が行われたケースは多かったと言われる。しかしその後は証券取引等監視委員会の取り締まりも厳しくなり、損失補填のケースはだんだんと減っていった。

だがここにきて、東郷証券が損失補填を行っていた疑いがかかっている。まだ行為が確定していたわけではないが、強制捜査が行われると多くのケースで問題行為が実証される。今回も強制捜査まで行われた以上は、損失補填を行っていた可能性が高いのだろう。

損失補填行為はこのように当局に見つかると強制捜査、そしてその後は行政処分などを受けるリスクがある。にも関わらず東郷証券はなぜ行ったのか？もちろん本当の理由は捜査が進まないと明らかにならないが、大口顧客を失いたくなかったのか、あるいは顧客と何らかのトラブルがあったのかもしれない。何にしても、東郷証券は損失補填によって重い代償を支払うことになる。