増える商品先物連動トークン

法定通貨にレートが連動したステーブルコインはすでに多くが流通しており、最も人気の高いテザーは時価総額でも3位にある。そして法定通貨ではなく商品先物にレートを連動した仮想通貨もだんだんと増えてきている。

金や原油に連動

　2017年に最初の仮想通貨ブームが起こり、世界における仮想通貨の知名度は飛躍的に高まった。それ以来仮想通貨は社会の一部になっており、現在では多数の仮想通貨が流通している。

　仮想通貨の中でも法定通貨にレートを固定したものをステーブルコインという。日本では規制が厳しいこともあり日本円に固定したステーブルコインはあまり出回っていない。だが米ドルに固定したステーブルコインは多くあり、最も人気なのはテザー（USDT）はビットコイン、イーサリアムに次いで仮想通貨の時価総額ランキングで3位につけている。

　そして仮想通貨の中には商品先物にレートを連動させたもの、つまり商品先物連動トークンもある。例えばNY先物市場の金価格に連動させたパックスゴールド（PAXG）がその1つ。この通貨はPaxosというアメリカ・NY州の企業によって開発・発行されている。

　余談だがPaxosは最近になり、ステーブルコイン・バイナンスUSD（BUSD）の発行に関してSEC（証券取引委員会）から提訴されてニュースになったこともある。

　もう1つ、テザー（USDT）を発行するテザー社が同じく発行している金連動トークンとしてテザーゴールド（XAUT）もある。これらの2つのレートの推移をみると、おおむねNY金と連動して動いているようだ。

　さらにNY先物市場の原油価格と連動した米国原油スポットトークン（XTI）もある。これはCurrency.comという企業が発行している仮想通貨。こちらのチャートを見てもだいたいNY原油と連動しているが、多少のズレもある。昨年3月にウクライナ紛争開始の影響で原油が130ドルになった時も、XTIは130ドルになっていない。

　このような仮想通貨を扱っている日本の仮想通貨取引所はまだほとんどない。したがって買いたいと思っても簡単には買えないが、そのような問題を置いて商品先物連動トークンを買うメリットを考えてみよう。

　商品先物には限月があり、長期保有ができず長期投資するにはロールオーバーが必要になる。それに対して商品先物連動トークンならロールオーバーなしで長期保有ができる。

　また仮想通貨なので、ある取引所で買ったものを他の取引所に送金したり、あるいは対応できるものなら個人のウォレットに送金することも可能になる。

　一方ネックの1つは税制になる。日本では商品先物は申告分離課税で住民税合わせて一律20％（＋少額の復興特別税、以下同様）だが、仮想通貨だと総合課税で最大55％になる。ただし仮想通貨は全て総合課税なので、他の仮想通貨と比べると税制面で不利な点はない。

　日本では簡単に買えないが、海外にはこのような仮想通貨もある。商品先物や法定通貨以外にも、株式の個別銘柄に連動する通貨もあった。多くの原資産に連動する仮想通貨が次々出てきており、今後も増えていくと思われる。