南ア変異株のためリスク回避拡大

26日未明に南アフリカでコロナウイルスの新たな変異株が見つかったことが報道された。変異株の今後の拡大の恐れから金融市場ではリスク回避の動きが広がり、株式市場、原油、仮想通貨は大幅安となり円高が進行するなど影響が広がっている。

日経は747円安

　最近になって日本に限ればようやく落ち着いてきたCOVID-19（新型コロナウイルス）のパンデミック。特に今年猛威を振るったデルタ株以降は強力な変異株があまり出現しなかったことが大きい。

　ところが26日未明になって、南アフリカで新たな変異株が出現したと発表された。新たな変異株についてはまだ情報が少なく名前もつけられていないが、これまでのワクチンがあまり効かない可能性が指摘されている。

　新変異株が世界に拡がりパンデミックがまた拡大するとの懸念から、26日朝以降は金融市場が大変動した。東京株式市場では日経225平均の寄り付きは175円安の29,324円だったが、前場に大きく下落し29,000円を割った。そして後場になると一時前日比900円近く安い28,605円をつけ、終値は747円安だった。この水準は10月29日以来約1ヶ月ぶりの安値。

　リスク回避の流れは他の市場にも広がった。NYの先物市場は25日は感謝祭のため休場していたが、WTI原油は日本時間26日午前8時頃に取引が再開されるとすぐに下落。日中から夕方頃まで下げは続き、一時は約2ヶ月ぶりの安値となる72ドル台をつけた。

　仮想通貨市場も大きく崩れた。25日にやや上昇し26日未明には680万円だったビットコインは、他の金融市場と同じく午前8時頃から大きく下落。夜になると約1ヶ月半ぶりの安値となる610万円台をつけた。ここまでの下落率は約10％と日経225平均や原油などに比べて大きく、かつ夜になっても下げ止まる気配がない。

　他の主要仮想通貨も暴落しており、イーサリアムは午前8時の52万円から午後9時過ぎには13％以上安い45万円に。バイナンスコインは午前11時台に本日の高値である7万5000円をつけた後暴落し、午後9時過ぎには6万5000円とイーサリアムと同じく13％以上暴落した。

　為替市場では円高が進行。午前8時頃には115円30銭台だった米ドル/円は日中から夕方過ぎにかけて円高・米ドル安が続き、夜には一時113円60銭台になった。

　そして26日のNY株式市場開始前のダウ工業平均先物は、前日比約800ドル安のかなり低い水準まで売られた。

　26日のようなリスク回避の流れが続けば、円高・株安、それに先物や仮想通貨も下げが続く暴落スパイラルになる可能性がある。しかしそれは今後の新変異株の動向次第だろう。すでに南アフリカの他にイスラエルなど数ヶ国で見つかっているものの、現在の範囲内に収まればそこまで懸念するほどではないかもしれない。その場合金融市場の動揺は比較的短期間で収まる。

　現に今年中に何回かダウ工業平均が500～800ドル下げた日、あるいはそれが2～3日続く日があったが、暴落は長続きせずすぐに株式市場はリバウンドした。

　その一方今回の新変異株が多くの国に広がるようなことがあれば、金融市場の動揺はさら拡大し数週間続く暴落となるかもしれない。全ては新変異株の動向次第ということになる。