企業としてのモデルナの現状

2019年まで日本ではほとんど知られていなかったモデルナだが、現在ではコロナワクチンを開発した企業として誰もが知る名前となった。ワクチンのことばかりであまり語られることのないモデルナの経営や株価について探ってみた。

ワクチンで爆発的に成長

　2019年までモデルナ（銘柄コード：MRNA）という企業のことを知っている人は日本にはほとんどいなかった。しかし2020年にパンデミックが始まると、モデルナはすぐにコロナウイルスに対抗するワクチンの開発を開始。秋には完成させて日本を含む世界各国で接種されるようになり、2021年には日本でも知らない者の少ない有名な企業となった。

　だがモデルナのコロナワクチンのことはメディアで語られることが多いのに対し、現在の経営状態や株価についてはあまり語られない。そこでここでは企業としてのモデルナの現状を探ってみる。

　2010年にアメリカのマサチューセッツ州で創業されたモデルナは、コロナワクチンの開発に成功する前は年間売上高が1億ドル（約115億円）程度の企業だった。とはいえ2018年にはNASDAQに上場しているので、その時点でもすでにかなりの成功を収めていた。

　そして2020年になってパンデミックが始まり、ワクチンの開発を開始し成功したために急成長する。同社は12月決算だが、2020年第1四半期（1～3月期）以降の売上高と純利益は以下のように推移してきた。

2020年第1四半期：売上高840万ドル（約9億7000万円）、純損失1億2400万ドル（約142億円）

2020年第2四半期：売上高6,600万ドル（約76億円）、純損失1億1700万ドル（約134億円）

2020年第3四半期：売上高1億5800万ドル（約182億円）、純損失2億3300万ドル（約268億円）

2020年第4四半期：売上高5億7000万ドル（約650億円）、純損失2億7000万ドル（約310億円）

2021年第1四半期：売上高19億4000万ドル（約2,230億円）、純利益12億ドル（約1,380億円）

2021年第2四半期：売上高43億5000万ドル（約5,000億円）、純利益27億8000万ドル（約3,200億円）

2021年第3四半期：売上高50億ドル（約5,750億円）、純利益33億3000万ドル（約3,830億円）

このようにコロナワクチンの成功で爆発的に成長した。また2020年はずっと赤字だった純損益も21年になると黒字化に成功し、前年の赤字額より遥かに大きい利益を出している。

2021年第4四半期の決算は他の企業に遅れて2月24日に発表される予定だが、売上高は68億ドル（約7,800億円）、EPS（1株あたりの利益）は9.9ドルと予想されている。

　では株価の方はどうだろうか？モデルナの株価はワクチン開発前の2019年には15～20ドルのそれほど高くない価格に留まっていた。しかしモデルナがワクチン開発に着手した2020年春頃から上昇を始め、完成した秋以降は上げが加速。2021年8月には500ドルにあとわずかというところまで上昇した。

　だが昨年夏をピークにその後は下げが続き、今年2月22日の終値は144.97ドルでピークの3分の1以下になった。

　モデルナ株が昨年夏以降低迷しているのはなぜだろうか？1つにはコロナワクチンが昨年夏までに先進国の多くで接種を完了したことがあると思われる。欧米の多くは希望者の多くが夏までに終わり、日本も11月頃までにはほぼ完了した。

　その後は3回目接種が進んでいるものの、現在のワクチンは3回で終わりで4回目、5回目と打ちにいく可能性は低いだろう。イスラエルが4回目の接種を進めているが、他の国はほとんど進めていない。

　現在のワクチンはオミクロン株には効果が薄いこともあり、いずれ売上は頭打ちになる。そうなると売上をさらに伸ばすには新しいワクチンを開発するしかない。新ワクチンがいつ完成するかのメドはまだ立たず、それが昨年夏以降のモデルナ株安につながっているのではないか。