今週の金融市場の動き総括、3月1～5日

今週は米ADP雇用統計と米雇用統計が発表され、オーストラリアの政策金利発表もあった。しかしそれ以上に長期金利の上昇が金融市場にとって大きな材料となり、株式市場は乱高下した一方米ドルが堅調だった。

原油は大幅上昇

　今週は重要な経済指標の発表が多かったが、その中でも最重要だったのは米2月ADP雇用統計と米2月雇用統計だったと思われる。3日水曜に発表された米2月ADP雇用統計は、予想の前月比17万7000人増に対し発表は11万7000人増と予想をかなり下回った。5日金曜に発表された米2月雇用統計は、予想の前月比18万2000人増に対し発表は37万9000人増と予想を2倍以上上回る増加だった。

　米雇用統計以外にも重要な発表がいくつかあった。2日火曜に発表されたユーロ圏の2月消費者物価指数は、予想通りの前年同月比＋0.9％だった。同じ日に発表されたカナダの第4四半期GDPは、予想の前期比年率7.5％増に対し発表は9.6％増と予想を上回った。3日には豪第4四半期GDPが発表され、予想が前年同期比1.9％減、発表は同1.1％減だった。

　政策金利としては2日にオーストラリア中銀からの発表があり、予想通り0.1％のまま据え置きとされた。

　経済指標も重要だったが、今週は2月以降上昇が続いている米や他国の長期金利が大きく市場を動かした。そして5日未明から朝方にかけて日米の中銀総裁が相次いで発言し、その姿勢の違いが大きく市場に影響した。

　5日未明にはFRBのパウエル議長が講演を行ったが、市場が期待していた長期金利への対策については何もなかった。一方5日午前中に国会で日銀の黒田総裁が発言し、現在0.2％と定められている長期金利の上限について「引き上げるつもりはない」と述べた。パウエル議長の発言後米長期金利はまた上昇し、一時は1.6％に到達した。

　今週の株式市場は値動きが荒かった。先週の26日金曜には1,202円と歴代10位の下げ幅となった日経225平均は、週明け1日は697円高と前営業日の下げの半分以上を取り返した。2～3日にはあまり動かなかったが4日には629円下落し、5日も一時600円以上下げた後に66円安で終了。週足では102円安の小幅下落だった。

　NY株式市場も荒い動きが続き、週明け1日にはダウ工業平均が603ドル上昇。その後3営業日は下げが続いたものの、5日にはまた572ドル高となり週足では564ドル高だった。

　そして先物市場では今週も原油が上昇した。今週を62ドル台からスタートしたNY原油は、4日に開催される産油国の会合で減産が縮小されるのではないかという観測から週前半は下落。週半ばには一時59ドル台に沈んだ。しかし4日の会合では結局減産が1ヶ月延長されたため、会合後には大きく上昇。週の終了時までに昨年1月以来の66ドル台をつけた。

　来週はカナダとユーロ圏の政策金利発表があり、また日本の第4四半期GDP改定値などが発表される。週末に米上院で約2兆ドルの大規模景気対策が成立したことは株式市場にとって買い材料だが、米長期金利高が売り材料として残るので上下どちらに動くか判断がしにくいところだ。