中東停戦合意で原油価格に下押し圧力か

2023年10月に突然始まりこれまで2年ほど続いてきた中東・ガザの紛争だが、今週になってイスラエルとハマスが停戦で合意。今回はこれまでと違い本格的な紛争終結につながる可能性があり、そうなれば原油価格に下押し圧力がかかることが期待できる。

人質は全員解放へ

　2023年10月に中東で過激派組織・ハマスがイスラエルに対して突然攻撃を仕掛け、それ以来2年間紛争が続いてきた。

　この紛争は地中海に面した地域・ガザに起因する。ガザは2007年頃からイスラエル軍によって封鎖されており、人や物が自由に出入りできない状況が続いている。そのためガザは「天井のない監獄」と呼ばれており、200万人が生活物資が少ない厳しい環境で暮らしている。そしてハマスはガザ地区を実効支配しており、イスラエルとは以前から敵対していた。

　2023年10月にはハマスがイスラエルに対して奇襲を仕掛け、そこから2年間本格的な紛争が続いてきた。ハマスは奇襲時にイスラエルの人々を人質として捕えており、人質が解放されるまで紛争の終結はない状況だった。

　しかし日本時間の今週9日になって、イスラエルとハマスが新たな停戦「第1段階」の合意文書に署名したとの情報が流れた。この合意内容は、ハマスが現在拘束している人質を全員解放し、イスラエルはガザの一部地域から撤退するとのものだった。

　停戦合意は日本時間の10日未明頃にイスラエル政府によって承認されれば、その後24時間以内に発効する。紛争開始以来の2年間で何度か短い停戦があったものの、その後戦闘が再開され完全な終結はなかなか見えなかった。だが今回の停戦は紛争終結につながるものと期待されている。

　中東の紛争が終結に向かえば、原油価格はさらに下押し圧力がかかることが期待できる。もともと今年になって、産油国がこれまで行ってきた減産を段階的に縮小したりするなど原油価格には売り材料が多かった。

　そのため今年の原油は長期的に下げが続いており、春には一時約4年ぶりに60ドルを割って50ドル台をつけたこともあった。

　日本は石油の輸入国であるため、原油価格の下落は日本経済にとってプラスになる。特に現在は数年前に比べてかなりの円安水準にあるため、原油価格が上昇すれば国内のガソリン価格は非常に高くなる。それに対して原油が安ければ、円安の状況でもガソリン価格への影響は緩和される。

　そしてガソリンだけの問題ではなく、これまで2年間紛争で苦しんできたガザの人々がようやく平和に暮らせる日々が戻ってくるかもしれない。9日の合意は第1段階とされているが、この停戦がこのまま進展することを期待したい。