中国で最大の地下銀行が摘発される

中国には正規の免許を持たずに銀行業務を行っている地下銀行がたくさんあるが、その中でも最大と言われる銀行が、先週末に当局によって摘発された。

不正に海外送金をする銀行

日本のように政府による産業・企業の統制が厳格で、かつ国民も比較的それを守っている国では地下銀行というものはあまり存在しない。しかし中国のようにルールがきちんと守られない国では、地下銀行が多くある。

地下銀行とは、正規の銀行免許を持たずに隠れて銀行業務を行っている銀行のことだ。そのため、表向き「○○銀行」という看板を出して営業しているところはほとんどない。

地下銀行の中でもニーズが高い業務に、海外送金がある。というのも、中国は市民の海外送金を年間5万ドル（約610万円）までと規制しているからだ。それを超えて送金したい者、不正に得たお金を送金したい者、パスポートやビザなどを見せられない不法に滞在している外国人が送金したい場合など、地下銀行の海外送金に対する需要な多く存在している。

実際中国の富裕層には、お金を稼いでからアメリカやカナダなどの先進国に移住する人々が多い。そういった人々が資産を海外に移すにしても、地下銀行を利用していると思われる。

しかしもちろん中国当局は地下銀行の存在をよく思っていない。ただこれまでは取り締まりにしてもそこまで本腰を入れていなかったのだ。それが変わったのは、今年の夏だった。今年6月以降に上海株式市場が暴落。そして中国経済の先行きに対する懸念が急激に高まったため、中国からの資本流出に対し中国政府の警戒感が高まった。

そこで8月から、地下銀行に対する取り締まりを強化。そして今月21日になって、これまで640億ドル（約7兆8700億円）もの取引に関わっていたと言われる、中国でも最大の地下銀行を摘発した。ただこの銀行だけではなく、取り締まりが強化されていたこの3ヶ月間、他にも多くの地下銀行が摘発されていた。

だが最大の地下銀行が摘発されたところで、それで中国の地下銀行ビジネスが終わるはずはない。中国は汚職や偽ブランド品など、あらゆる不正が国内で行われ、名目上政府はそれらを取り締まっている。しかしそれらがなくなることはない。中国という国の性質上、1つ取り締まるとまた後から1つまた1つと別のものが生まれてくる。

地下銀行も同じようなものだ。そして地下銀行は、マカオのカジノでお金を使うような富裕層にも利用されていると言われる。そのようなニーズがある以上、完全な撲滅は相当難しいのは間違いない。