レディ薬局はなぜ上場廃止になるのか？

東証のJASDAQスタンダード市場に、レディ薬局という株式（銘柄コード：3027）がある。しかし9月14日になって、「本日開催された株主総会において、（中略）同社株主の所有する同社株式の数が1株に満たない端数となる割合で行う株式の併合に係る議案が承認されました。」という理由で上場廃止が発表された。これは一体どういうことなのか？

フジとツルハの2社がTOBを実行

最初に解答の一部を言うと、レディ薬局はここで「スクイーズアウト」という手法を実行。それによって株式が上場廃止になるが、これはレディ薬局が完全に「意図的に」廃止にもっていった結果なのだ。

この話の前提条件として、レディ薬局をフジ（銘柄コード：8278）とツルハホールディングス（銘柄コード：3391）という2つの会社が、完全子会社化すると発表している事実がある。

フジとはフジテレビではなく、四国地方で展開しているスーパーチェーン。ツルハはツルハドラッグなどを経営している薬局チェーンだ。レディ薬局も、これまで中国・四国地方で薬局を展開してきた。

そして4月13日に、この両社でレディ薬局株を2回に分けてTOB（公開買い付け）を行うと発表。TOBとは、不特定多数の株主から特定の会社が決まった価格で株式を買い取るものだ。そして4～5月の第1回TOBでは、1株あたり800円。6～7月の第2回では1株あたり1,000円と買い取り価格が発表された。

TOBが発表された4月13日のレディ薬局株の終値は576円だったが、当然ながらこのニュースを受け、その後数日間はストップ高が連続。17日には997円まで上がり、その後は現在まで5ヶ月間、990～1,000円でずっと推移している。このようなケースではTOB価格が1株1,000円なので、1,000円を超えることはほぼありえない。

一番得をしたのは、TOB発表前にレディ薬局株を買って保有していた投資家だろう。直前が576円だったので、何もしなくても2倍近い1,000円で株式を売れることが決まったのだ。レディ薬局の株はアベノミクス開始前の2011～12年頃は200～300円、アベノミクス後は500～600円で推移していた。この時期に買った投資家は全員、TOBで利益が出たことになる。

このTOBによって、フジとツルハの2社でそれぞれほぼ50％ずつ、合わせて100％のレディ薬局株式を取得し、完全子会社にする予定だった。ただ問題は、TOBに応じない株主がいる可能性だ。実際直前の価格が576円だったことを考えると、1,000円はかなり条件のいいTOBだった。

しかし条件のいいTOBを実施しても、それでもレディ薬局株を売りたくない投資家が出てくる。そして今回の子会社化では、残った投資家の影響を完全に排除することを望んだ。このように、M&Aなどを行った後、小株主を排除する行為を「スクイーズアウト」と呼ぶ。

スクイーズアウトにもいくつかの手法があるが、今回レディ薬局が採ったのは、大規模株式併合という手法だった。今日の臨時株主総会で、「既存株291,201株を1株に併合」という、通常ではありえない大規模株式併合を行った。

これを行うとどうなるのか？ほとんどの小株主は、保有株の株数が1株未満の小数、0.03株などになり、議決権が消滅する。またこのように「1株に満たない端数となる」株式併合を行ったことで、東証の上場廃止規定に抵触して、上場廃止が発表された。上場廃止になることで、株式市場で売買もできなくなる。

いわばレディ薬局の上場廃止は全て意図的なもの、フジとツルハの完全子会社化のために、小株主の影響を排除する目的で行われたスクイーズアウトの結果だった。ちなみにまだ株式を持っている株主は、今後端数の株に対して金銭が支払われる。1株1,000円になるかどうかは、まだ確定していない。