マウントゴックスがついに債権者に返済開始との情報

2014年前半に破綻した仮想通貨取引所のマウントゴックスは、状況が特殊なため破綻から10年経ってもまだ破産処理が続き債権者にも返済がされないままだった。しかし今週になって債権者がSNSなどを使って「返済を受けた」とのメッセージを配信しており、10年ごしの返済がついに始まったようだ。

BTC価格上昇で返済可に

　仮想通貨が金融資産の一種としてすっかり市民権を得たことで、現在では日本に多くの仮想通貨取引所が存在するようになった。また世界最大級の取引所であるバイナンスの日本法人も、今年夏頃から本格的に業務を開始した。

　しかし2017年の最初の仮想通貨ブーム以前は、仮想通貨の知名度も低く日本にある仮想通貨取引所もあまり多くなかった。

　そのような中、2014年に破綻するまでは日本最大の仮想通貨取引所として君臨していたのがマウントゴックスだ。2017年以前はビットコイン以外の仮想通貨はほとんど出回っておらず売買もされていなかったので、マウントゴックスは他の仮想通貨は扱わない事実上のビットコイン取引所だった。

　マウントゴックスはビットコインがようやく流通を始めた2009年から、ビットコイン取引所業務を日本で開始していた。その点、かなり先見の明があったことは間違いない。そして日本に仮想通貨取引所が少ない中好調に顧客を増やしていたのだが、2014年2月にハッキングを受けてビットコイン80万枚が流出してしまった。

　当時ビットコインは1枚＝5万円と現在からは考えられない安値だったが、それでも流出した数が80万枚もあったので総額400億円の多額の被害となった。そしてこの事件が元で、マウントゴックスは倒産してしまった。

　当初は民事再生法の適用を申請して再生を目指していたのだが、条件を満たさず同年4月には破産手続きに移行した。しかしその後仮想通貨ブームとなったことで、マウントゴックスの破産処理は大きく方向が変わる。

　2017年に仮想通貨ブームが起こりマウントゴックスに残っていたビットコインの価値が激増したため、債権者達が「十分な資産があるから民事再生にして債権者に返済するべき」と主張。そのため2018年6月には再度民事再生法の適用を申請し、認められた。

　2019年3月には、元CEOのフランス人のマルク・カルプレス氏が、東京地裁で私電磁的記録不正作出・同供用罪で懲役2年6ヶ月、執行猶予4年の有罪判決が言い渡された。カルプレス氏は倒産前にマウントゴックスの経営で不正な行為を行っていたため、その刑事裁判だった。

　2020年12月にはようやく再生計画案が提出された。

　2021年1月にはカルプレス氏の控訴・上告手続きが終わったが地裁判決は変わらず、懲役2年6ヶ月、執行猶予4年が確定した。

　このように元CEOの刑事裁判を挟みつつ、マウントゴックスの破産処理はすでに10年近く続いてきた。ここまで長くかかっているのはすでに述べたように一度破産手続きになりまた民事再生にされたという事情の他に、債権者の多さや資産が仮想通貨という特殊なものであることが理由でもあった。

　そして今週になり、債権者がSNSなどで「マウントゴックスからの返済を受けた」と配信し始めた。倒産から10年近くかかり、とうとう返済が開始されたようだ。

　それにしてもマウントゴックスはハッキングからの倒産という流れがなければ、そのまま日本の主要仮想通貨取引所になっていた可能性を考えると残念な倒産でもあった。