パンデミックが終息に向かえば株価は上がるのか

9日の午後8時過ぎに米製薬大手のファイザーがワクチンの治験で90％以上の感染予防効果が見られたと発表し、一時株式市場が大暴騰した。ワクチンによってパンデミックが終息に向かうことを見据えた買いが殺到したのだが、終息に向かえば本当に株価は上がるだろうか。

多くの株が上がったがGAFAは…

　2020年はCOVID-19（新型コロナウイルス）のパンデミックのために実社会も金融市場も大変動の年となり、2～3月には株式市場が空前の大暴落となった。

　そして11月9日に、またもパンデミック関連の材料で金融市場で大変動が起こった。午後8時過ぎに米製薬大手のファイザー（銘柄コード：PFE）が、行っていたCOVID-19ワクチンの治験で90％以上のケースで感染を予防する効果が見られたと発表。

　この発表によってパンデミック終息期待が一気に高まり、ダウ工業平均先物は直後に1,000ドル以上の大暴騰。夜になってNY株式市場が始まると、ダウは一時前日比1,700ドル以上暴騰した。また発表直後に日経225先物も1,000円以上暴騰した。

　少なくとも9日のダウや日経を見る限り、パンデミックが終息に向かえば株価が上がるだろうと期待している投資家が多かったことがわかる。しかし終息に向かうことで本当に株価が上がるだろうか？

　終息に向かうことで、航空、ホテル、飲食、イベントなどパンデミック下で極めて厳しいビジネスを強いられていた業界で企業業績が改善に向かうことは間違いない。だからこれらの業界の株価は上がるだろう。

　しかしその一方、パンデミック下で逆に業績が伸びていた業界は、終息に向かえば業績が落ちる懸念があるのも事実。具体的にはIT業界がそのような業界の典型になる。

　9日のNY株式市場はダウが一時1,700ドル以上上がり、終値も834ドル高の暴騰の日だった。だが全ての株が上がったわけではない。これまで数年米株式市場をけん引してきたのはいわゆる「GAFA」と呼ばれるIT大手4社であるが、ではGAFAの9日の動きはどうだったのか？

　Facebook（銘柄コード：FB）を見ると、9日は5％安となんとかなり下落していた。Amazon（銘柄コード：AMZN）も同様に5％下落で終了。Apple（銘柄コード：AAPL）は2％安で終了し、GAFAの中で唯一上昇したGoogle親会社のアルファベット（銘柄コード：GOOGL）もわずか0.07％高とほぼ上がっていなかった。

　そしてAmazonなどが所属しておりIT銘柄が多いNASDAQ市場のNASDAQ総合指数は、この日は前日比1.5％安で終了。ダウが大きく上昇したのに対しNASDAQ総合指数は下げで引けていた。

　このように9日は指数のダウと多くの銘柄が上昇したのだが、GAFAのうち3社は下落しまたNASDAQ総合指数も下げで終わった。パンデミックが終息に向かえば多くの業界の株は上昇するのかもしれないが、IT株はむしろ下落する可能性もある。これまでパンデミック下でITの重要性がこれまで以上に高まったのが、パンデミックが終われば元に戻る前提である以上、下落しても全く不思議ではない。